さいはての家
彩瀬 まる
集英社
2020-01-24


駆け落ち、逃亡、雲隠れ。
行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。
家族を捨てて逃げてきた不倫カップル――「はねつき」
逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生――「ゆすらうめ」
新興宗教の元教祖だった老齢の婦人――「ひかり」
親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹――「ままごと」
子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男――「かざあな」

築年数が古くてガタついている家なのに、なぜか契約者が絶えない一軒家。
そこを住みかとする人たちはどこかワケあり。
それでも人と全く関わらないで生きていくことは無理で、隣の介護施設から毎日漏れ聞こえる歌声や、過去の住人が植えていった植物が育つ庭、逃げてきた前の住民達のお話。
何かが住民の琴線に触れ、人はまた前を見て歩き出す。
この5編で言うと住んでいた順番は「はねつき」「ひかり」「ゆすらうめ」「ままごと」「かざあな」なのかな。
大家さんが胡散臭そうに見えたり、ときには良い事を言ったり、なかなかのキーパーソンでした。
印象的だったのは「ままごと」かな。家族って自分が育った1家族しかほとんど分からないから。子供の頃は親の意見が絶対だったりするから、子どものうちは仕方がない。でも、大人になるにつれ自我が芽生えて自分がやりたいことも分かってくる。満は家を出て正解でしたね。朔も気づいたみたいで良かった。生き生きと生きる2人の今後はみてみたいです。
全然関係が無いんですけど「ゆすらうめ」という言葉を聞いて懐かしくなりました。漢字で書くと「梅桃」。1997年の朝ドラ「あぐり」の原作が「梅桃が実るとき」というタイトルだったので^^私が生まれて初めて最初から最後まで見た朝ドラで、主人公のモデルとなった吉行あぐりさんの原作も読んだなーとふと思い出しました。真っ赤で可愛い実が生りますよね。実物を見たことは多分ないんですけど。

<集英社 2020.1>2020.3.7読了