タスキメシ 箱根
額賀 澪
小学館
2019-11-06


箱根駅伝100年!胸熱スポーツ小説決定版
あの眞家早馬が「駅伝」の世界に戻ってきた!
大学卒業後、管理栄養士として病院で働いていた早馬は、紫峰大学駅伝部のコーチアシスタント兼栄養管理として、部員たちと箱根駅伝初出場を目指すことになる。高校時代、大学時代も陸上の名門校で長距離走選手として期待されたものの、怪我から思うような成績を残せなかった早馬。その背景にあった、嫉妬、諦め、苦い思い――。数々の挫折を経験した者として部員たちに寄り添い、食の大切さ、目標達成の楽しさを伝えようと奮闘する早馬。そんな彼のことをキャプテンの4年生、仙波千早は最初は受け入れられずにいたが……。
一度も箱根駅伝に出場できない弱小チーム。でも、だからこそ、「箱根駅伝に出たい」「箱根を走らせてやりたい」。徐々にひとつになっていく千早たち部員の熱い願い、そして早馬が見つけた新たな夢は、果たして叶うのか――。
臨場感溢れる箱根駅伝本戦の描写とともに、丁寧に描かれるそれぞれの心情。エリートではない若者たちの夢、苦悩、様々な思いが、箱根路を駆け抜ける!

そうか…箱根駅伝は第1回から数えたら2020年は100年目なんですね…(戦時中の4年は開催されていないため2020年は第96回大会)
「タスキメシ」の早馬が帰ってきた!!って「タスキメシ」から4年経つんですか!?マジですか!?
「タスキメシ」は大学時代よりも高校時代の方が長かったのでこちらの方が箱根駅伝の臨場感をよりリアルに感じられた気がします。どちらかというとこの作品を読んでいて「風が強く吹いている」を思い出しました。「タスキメシ」が箱根駅伝に対する序章で、こちらが本編のような気もします。失礼かな、この言い方…。
25歳になった早馬は紫峰大学駅伝部のコーチアシスタント兼管理栄養士として部員たちと共に寮生活を行っていくことになります。でも最初にMGCの事が書かれていたのにはニヤリとしちゃいましたよね。流石額賀さんです。春馬に助川に藤宮。苦楽を共にしたライバルであり仲間たちがみんな出場権を獲得してこの大会に挑んでいましたね。MGCの臨場感もリアルでした。私もこの大会は最初から最後まで見ていたけど、額賀さんも見ていたんだろうな、何回も。
そして早馬たちの物語。キャプテンである千早は早馬の事が苦手だった。それは箱根駅伝を目指して走れず別の道を歩んでいる姿に自分の将来を重ねてしまったから。前作を読んでいたら早馬が千早が思うような感情で生きていないってすぐに分かるんですけどね、まあそれは読んでいるから言えることで^^
それでも千早は早馬と関わっていくことで変わっていきます。他の部員たちも意識が変わっていく。出来れば出たいけど、でも無理なんだろうななんて心の奥で思っていた感情が、絶対に箱根駅伝に出てやる!という意識に変わっていく感じがとても良かったです。
そして箱根駅伝の本戦。毎年食い入るように見ているから、情景が目に浮かぶようでした。
特に9区から10区へ襷が渡される中継所。
あそこは距離があるから本当にもどかしい時はもどかしくて。繋がるかどうか…とドキドキするシーンを彷彿とさせました。
駅伝を愛している額賀さんだからこそのレース展開だなと思いました。
そしてとても細かく丁寧に取材されたことが分かります。筑波大学で取材されたってどこかでおっしゃっていたような気がします。筑波大学も久しぶりに本戦出場を決めましたよね。
筑波大学と言えば、学連選抜で5区山登りでごぼう抜きをしていた某選手の姿を昨日のことのように思い出せるのですが…あれは多分15年前くらいですよね…^^;後輩たちは母校の襷で今度は走れますね。
書きたいことはたくさんあるのですが…。最後が事実と変わってしまって凄く悔しい。それは著者さんが一番悔しいと思うけど。仕方がないことなのだけど。みんなが応援している声を聞いて一人がその方を向いて笑顔を見せたということは、他の大会で2時間5分50秒を切って選ばれたってことですよね。それはあの3人のうち誰なのか…それを想像するのもまた楽しいです。最後のシーンなので細かくは言いません。読んでいないと意味が分からないと思いますがすみません。
ゴールのシーンは涙しながら読みました。
箱根駅伝は本当に素晴らしい。一言では言い表せない。とんでもなく過酷で辛くて、でも楽しくて素晴らしい大会なんですよね。来年の96回大会もますます楽しみになりました。

<小学館 2019.11>2019.11.25読了