川っぺりムコリッタ
荻上 直子
講談社
2019-06-27


大ヒット映画「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の監督が贈る、書き下ろし長編小説
「なんで生まれてきちゃったんだろうって、ずっと思っていました」
高校生の時に母親に捨てられ、知り合いの家や建設現場を転々とし、詐欺で入った刑務所で30歳を迎えた山田。出所後に海の近くの塩辛工場で働き始めた彼は、川べりに住みたいと願い、ムコリッタという妙な名前のアパートを紹介される。そこには図々しい隣人の島田、墓石を売り歩く溝口親子、シングルマザーの大家の南など、訳ありな人々が暮らしていた。
そんな山田に、役所から一本の電話がかかってきた。
幼い頃に別れたきり一度も会っていない父親が孤独死したので、遺骨を引き取ってほしいという――。
ずっと一人きりだった青年は、川沿いの古いアパートで、へんてこな仲間たちに出会う。
友達でも家族でもない、でも、孤独ではない。
“ひとり”が当たり前になった時代に、静かに寄り添って生き抜く人々の物語。

荻上さんの作品が大好きです。温かくて優しくてこちらも優しい気持ちになれます。
今回はとあるアパートが舞台。母親に捨てられ、いつの間にか詐欺に手を染め刑務所に入り、出所した山田。
川べりに住みたいと願い入居したのは「ムコリッタ」という不思議な名前のアパート。そこに暮らす人たちはどこか不思議でワケありな人たち。
山田も家庭環境が可哀想で、詐欺に手を染めてしまったけどどうか頑張ってほしいと思いながら読んでいました。根は真面目ないい子なんですよね。
アパートの住民のそれぞれの想いが分かってきて温かい気持ちになりました。
温かいご飯を食べられること、仕事が出来る事、生きていること。そのすべてを大事に丁寧に生きていきたいと思える作品でした。

<講談社 2019.6>2019.10.13読了