百花
川村 元気
文藝春秋
2019-05-15


大晦日、実家に帰ると母がいなかった。
息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく日々の始まりだった。
認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。
ふたりで生きてきた親子には、どうしても忘れることができない出来事があった。
母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき「一度、母を失った」ことを。泉は封印されていた過去に、手をのばすーー。
現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。
すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か。

私は身近な人が認知症になったことが無いので、自分が忘れられてしまうという経験をしたことが無いのですが、自分を忘れるというだけでなく、生活する上で必要なことも忘れてしまうということが怖いなと思います。
今は認知症と言っても進行を遅らせる薬もだいぶ出てきたと聞きます。やっぱり早期発見、早期治療が大事なのかなと思います。
大切な人だから何かの間違いだとはぐらかすのではなく、だからこそ受け止めて早く病院へ行くことが大事なんですよね。
60代での認知症発症は早い方ですが、それでも非現実的なわけでもなくて。実際に起こりうるかもしれないと思ったら、読んでいて怖かったです。
百合子と泉の軌跡、読む側がとやかく言う問題ではないけど、最後は百合子は幸せだったんじゃないかなと思います。
全然関係ないけど、泉と香織が小さな子を肩車してお母さんを呼ぶシーンは、ガラスの仮面で速水さんとマヤが迷子の男の子を見つけてお母さんを探すシーンを思い出しました。

<文藝春秋 2019.5>2019.7.5読了