死にがいを求めて生きているの
朝井 リョウ
中央公論新社
2019-03-07


植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。二人の間に横たわる“歪な真実”とは?毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、目隠しをされた“平成”という時代の闇が露わになる―“平成”を生きる若者たちが背負う自滅と祈りの物語。

企画ものだとは知っていましたが、詳細は分からなかったので最後まで読んでそう言うことかと分かった次第です。そこだけは少しファンタジーですが、登場人物たちの心情や行動は現代の問題そのままですよね。読んでいて嫌になってきました←
智也と雄介を取り巻く人たち側の視点で描かれた物語。
1番始めの看護師の時の雄介は友だち想いのいい人なんだと思ってました。
それが巨大な勘違いで、段々雄介という人物が不気味な存在だと分かってくると始めに登場した雄介の印象がガラリと変わりました。友だち想いという姿を演じている事にひたすら嫌悪感を抱きました。
私は智也や雄介、そして朝井さんよりも少し上の世代なので環境は少し異なると思いますが、こういう人って実際にたくさんいるんだろうなと思いました。SNSが蔓延っているのが当たり前の時代に生きている若者は自分は他の人とは違う、どこか特別だと感じている。そういう想いを発信できる場が多い気がします。ツイッターやインスタで自己主張をすることが出来ますし。大学時代に登場した人たちは最たるもので読んでいて何だか気持ち悪かったですね。
私だって生きがいを見つけたいし、生きがいを持って生きている人は羨ましいとも思う。それでも、別にそれを人にひけらかしたいとは思わない。
今の時代を表している気がして、朝井さん流石だなと思いました。またそういう世相を書かれるのを半ば使命と感じられているような気もします。朝井さんの世界を堪能しました。
この企画に参加されている作家さん全てを読むのは難しいと思いますが他の作品も読んでみたいです。

<中央公論新社 2019.3>2019.3.31読了