自由な心は誰にも奪えない。 ままならない世界の拠り所となる大人の絵本。
村はずれで「幸福が宿る鳥籠」を作る娘はひとりぼっち。 嵐の晩、彼女のもとへやってきた魔物が「さびしい小娘よ」とささやきますが――。千早茜の幻想を宇野亞喜良の描き下ろし15点が彩る孤独と自由の物語。
「ほんとうの幸い」とはなにか…。なんて「銀河鉄道の夜」の台詞が思い浮かんでしまいましたが。
目の見えない老婆に連れられてやってきた白い髪の娘。
娘はおばあさんに籠の編み方を習い、修得した後に我流で鳥籠を作り始めます。売り物ではないため家の前に飾り、村人が欲しいともらう代わりに食料などを置き、持っていくようになります。
その鳥籠を持つと幸せになる。そんな噂がまことしやかに流れ始めます。
そんな噂は勝手に作り上げられたもの。私利私欲にまみれた村人たちは小娘にどんどん鳥籠を作るように命じます。娘には誰も近寄らず、話しかけもしなかったのに、高額で鳥籠が取引されるようになったら娘の事を考えずに閉じ込めて鎖を付けて拘束し、鳥籠を作らせる。なんて身勝手な人たちなんだろう。
それでも空っぽの鳥籠には純粋な娘の心が入っている。老婆は娘にお金に変えがたい大切なものを教えてくれたんですよね。娘の無欲さが輝いてすら見えました。魔物はその無欲さに苛立ちを覚えていたんですね。自分にはないから。
それでも、魔物は自分の罪を認めて反省した。娘と魔物のこの先が幸福なものとなりますように。
<KADOKAWA 2019.1>H31.2.24読了
幸いとは、人が求めるものとは・・・、と考えさせられる作品でしたね。
からっぽの鳥籠にそれぞれが見ていたもの、そしてその結果をそれぞれが引き受けさせられたこと、シンプルな物語でありながら、深さがあったと思います。
https://mina-r.at.webry.info/202108/article_3.html