パリ、NY、東京。世界のどこかに、あなたが出会うべき絵がきっとある。その絵は、いつでもあなたを待っている。人生の岐路に立つ人たちが辿り着いた世界各地の美術館。巡り会う、運命を変える一枚とは――。故郷から遠く離れたNYで憧れの職に就いた美青は、ピカソの画集に夢中になる弱視の少女と出会うが……(「群青 The Color of Life」)ほか。アート小説の第一人者が描く、極上の6篇。

「群青」憧れのメトロポリタン美術館で働く美青。眼科へ行った時に弱視の少女と出会います。少女は食い入るようにピカソの絵を見つめます。その姿に美青は見惚れます。
「デルフトの眺望」仕事により世界各国を飛び回るなづきは少し前に父親を亡くす。なづきの代わりに父親の傍にいたのは弟のナナオだった。
「マドンナ」あおいは海外での仕事が多く、1人で暮らす母親を気にしつつも傍にいることが出来ないでいた。何気ない母親の電話にいら立つときもあった。
「薔薇色の人生」役所の戸籍課で働く多恵子は壁にかかる色紙について尋ねてきた男性の事が気になって仕事が手に着かないでいた。
「豪奢」憧れの仕事に就いた紗季だったが、若き実業家に見初められ、仕事を辞めることになる。しかし、相手は紗季をロンドンまで連れて行ったにもかかわらずドタキャンをしてしまう。
「道」新人芸術家を発掘する審査委員を務める翠はある絵画を見て過去を思い出す。

どの作品も絵画をモチーフとした原田さんらしい作品でした。
「デフルトの眺望」と「マドンナ」の主人公がリンクしていたのが面白かった。
そしてそれぞれの境遇と選択も興味深かったです。そして温かくて切なかった。
特に最後の「道」は本当に切なかった。でも新たな絆も生まれたはずで、未来に期待したいと思いました。

<新潮社 2018.11>H31.2.16読了