珠玉
彩瀬 まる
双葉社
2018-12-19


ファッションデザイナーの歩が経営するブランドは地味と皮肉られ人気が無く、さらには相棒に見限られて経営困難な状況だった。
歩自身も、「ファムファタル」と称され没後も語り継がれる歌姫だった祖母とは似ても似つかない容姿で、そのことから他人の美貌に辟易し、なるべく目立たぬように生きていた。そんなある日、ハーフのモデル・ジョージと出会う。自分が常に悩まされてきた外見を武器として使う彼の生き方をずるいと感じ、信用できずにいた。しかし、仕事を失ったジョージは歩の仕事を強引に手伝うようになり……。
自らの弱さに目を瞑ってきた登場人物たちが一歩ずつ成長する姿を丁寧に描いた物語。

読み始めはどこか幻想的で、誰が誰でなんの話をしているのか分からず^^;読み進んでいくのに時間がかかりましたが、分かってからは一気読みでした。
真砂リズというかつての大スターを祖母に持つ歩。祖母の事が大好きなのに、何をするにも祖母の影が立ちふさがる。祖母が気に入ってくれるような、祖母が好きになってくれるようなそんな服を作らなければと固執している。
最初の歩は何かに縛られているような感じがして読んでいても地味な女性の印象でした。それでも改めて真砂リズという女性を知っていくことで何かが弾け、開眼していく姿は見ていて素敵でした。サナギが蝶になったような美しさを感じました。
始めは歩の境遇を利用としたであろうジョージも、最後まで読めない奴でしたが、歩にとっては必要な存在だったんですね。2人は恋愛に発展するのかな…しなそうだな(笑)
そしてキシとカリンの存在が大きかったですね。この2人(?)の会話のお陰で最初、話の展開が分からなくて困りました^m^祖母が大切にしていたテディベアの両目にはめ込まれた黒真珠と樹脂パール。最初はクズ石とカリンの事を言っていたキシでしたけど、カリンが後半どんどん語彙力が増して輝いていくような感じが歩と重なっていきました。
自分を知る事、自分を好きになる事。そして強い芯を持つ事。私もそうなりたい。
最後の歩の姿は私の理想でした。

<双葉社 2018.12>H31.2.7読了