銀座は南紺屋町にある下宿屋「静修館」。若き大家の梨木桃介は無類の世話好きだ。家事万端を見事にこなし美味しい食事を作ってくれる桃介の元を追い出されるわけにはいかぬと、小説家の仙道湧水は我侭を封印して生活している。ある日、湧水は馴染みの記者から粗悪品の醤油を売っている店があるという噂を聞きつける。それは桃介とも縁の深い店だった。桃介の曇った顔は見たくない。湧水は探偵のごとく真相解明に乗り出すのだが―。明治の下宿屋を舞台に贈る、心あたたまるミステリ。
あ〜…好きだ。好きです。
三木さんの書かれる男性2人!もうもうもうたまりません!しかも桃介って何だか聞いたことがあるなと思ったら!里見が住んでいる下宿じゃないか!と思ったら里見出てくるし!三木さんの作品の中でリンクがあってもうニヤニヤしながら読んじゃいましたよー。里見久しぶり!(落ち着け)
でも今回は里見はチョイ役でメインは同じ下宿屋に住む小説家の湧水。
とてもわがままな男なのに胃袋をガッツリ掴まれている桃介に関しては嫌われたくないと口調すら変えている。なんて、可愛いですね。
そしてなぜか湧水の元に厄介ごとが舞い込むようになり、探偵のようなことをやる羽目に。粗悪品の醤油を売っているお店のこと、豪邸で無くなった特許の書類の謎、良い物件なのになぜか入居者が決まらない空き家、そして妖怪白湯気。ストーリーも面白かったですし、真相も面白かったです。人間の嫌なところとか弱さに付け込むところとか、嫌なところもありましたけど。
わがままな湧水ですが、根は良い奴なんですよね。だからなんだかんだ言いつつも厄介ごとを解決しようとする。最後の白湯気なんてまさにそう。感動しました。桃介も湧水も良いですが物怖じしない坂口も良いですよね。なんだかんだ言って湧水も坂口の事を買っていることが最後の話で分かり、余韻を残して読み終えることが出来た気がします。
<東京創元社 2018.8>H31.1.22読了