銀河食堂の夜銀河食堂の夜
著者:さだ まさし
幻冬舎(2018-09-28)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
大きな人生なんてない。
ただ、小さな幸せがあるだけ――。
謎めいたマスターが旨い酒を出す、四つ木銀座にある風変わりな飲み屋「銀河食堂」。そこで常連客が語るのは、ささやかな人生を懸命に生きた無器用な人たちの、不思議で切ない物語。感涙の連作長篇。
ひとり静かに亡くなっていたお婆さんは、実は昭和の大スター・安斉美千代だった。愛した人を待ち続けた彼女に、死の1週間前に届いた手紙に書かれていたのは……。「ヲトメのヘロシ始末『初恋心中』」
2000枚のSPレコードから探し当てた「兄が最後に聴いた曲」に込められていたのは、あの戦争で飛び立った青年と妹の、真っ青な空の下の切ない別れの物語。「むふふの和夫始末『ぴい』」
ほか、「オヨヨのフトシ始末『七年目のガリバー』」「マジカのケンタロー始末『無器用な男』」「まさかのお恵始末『ちいさな幸せ』」「セロ弾きの豪酒」、全6篇。

前回の生さだで宣伝されていたので(笑)読みました。
さださんの小説は何冊か読んでいますが、読むのは久しぶりだったかも。さださんってなんというか…綺麗な小説を書かれるんですよね。読んでいて心が穏やかになるというか、満たされるというか癒されるというか…。この作品もそうでした。
「銀河食堂」に集う常連たちが話す切ない物語の数々、そしてマスターのこと。連作短編集でしたが、どの作品も素晴らしかったです。最後の作品である種明かしがされていて、それも良かったなぁ。
「ヲトメのヘロシ始末『初恋心中』」孤独死という形で亡くなっていたかつての銀幕の大スターである元女優さんのお話。孤独死であり病死なのだと思うけど、私もヘロシの言う通り、心中だったんじゃないかなと思います。切ない。凄く切ない。来世で一緒になれたら良いねと思って読み終えました。
「オヨヨのフトシ始末『七年目のガリバー』」この作品の根底はあれですね、さださんの書かれた「償い」ですよね。読んでいてすぐに思い出しました。毎月毎月必ず書留でお金を送ってくるいわば加害者。被害者との関わり。考えさせられました。最後良かったですね。
「マジカのケンタロー始末『無器用な男』」ここに登場する不器用な男は本当に不器用でした。でも、母親のためにただ一生懸命だったんですよね。それはただひたすらに伝わってきました。オチが良かったです。良い人に気にかけてもらえてよかったですね。
「まさかのお恵始末『ちいさな幸せ』」常連のおじさんたちと会話をするようになったOLの過去の話。過去に男たちに襲われそうになっている女性を助けたことで出来た縁。恋人の二人は辛い日々を過ごしてきたのかもしれないけど、これからですよね。最後の家族の姿も良かったな。
「むふふの和夫始末『ぴい』」戦死した兄が聞いていた曲を2000枚あるレコードから探し出す話。切なかったですね。あの時代、どんな人でも戦地へ赴かなければならなかった。若いのに。未来があるのに。それが腹ただしくて悔しいです。その曲とは関係ないんですが他の小説で登場した「バイバイ、ブラックバード」という言葉が登場して、個人的にものすごくテンションが上がりました^^
「セロ弾きの豪酒」タイトルが面白いですね^^元ネタが分かるとニヤニヤしちゃいます。でもそのタイトルの人物はしょうがないというかどうしようもないというか、でも仕方がないというか、そういう人でしたね。マスターの過去が明らかになり、また再会を果たすことも出来たようで、良い終わり方でした。こういうお店が近くにあれば、私も常連になるのになぁ。

<幻冬舎 2018.9>H30.10.14読了