彼方の友へ彼方の友へ
著者:伊吹 有喜
実業之日本社(2017-11-17)
販売元:Amazon.co.jp

「友よ、最上のものを」
戦中の東京、雑誌づくりに夢と情熱を抱いて――
平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。
「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。
そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――
戦前、戦中、戦後という激動の時代に、情熱を胸に生きる波津子とそのまわりの人々を、あたたかく、生き生きとした筆致で描く、著者の圧倒的飛躍作。

この作品、直木賞ノミネート作だったんですね(今更気づいた人)
伊吹さんの作品の中では少しテイストが違う印象がありましたが、伊吹さんの良さは変わらなかったです。素晴らしかった。
現代を生きる90を過ぎた佐倉波津子が過去を振り返る形で物語は進んでいきます。
20代で終戦を迎えている人はもう90代なんですよね…
小学生の時に戦後50年と言っていて、遠いけどまだそこまで遠くないような印象だったんですけど(言い方があれですが)戦後70年を過ぎて、今の子供たちの祖父母はきっと戦争を知らない人たちで、時代が流れるのが良いような悪いような何だかその複雑な気持ちから読み始めていました。
長谷川純司の作風、読んでいて中原淳一みたいな感じなのかなぁと思ったら「少女の友」がモデルになっていたんですね。しかも実業之日本社で作られていて創業120年。なるほどー…って読んだ後に気づいてすみません。私以前弥生美術館にも行ったんだけどな…気づかなかった…。
波津子の成長物語でしたね。始めはオドオドしていて自分に自信がなくて、よくみんなイライラしないで見守っていたななんて思ったりもしたのですが(ひどい)素敵な女性へ成長していました。男性に囲まれて会議をする場面もありましたが、この時代に女性が働くというのはなかなか大変だったと思いますが、辛さを抱えつつもあしらい方も知っていたりしてかっこよかったです。
有賀主筆との関係が切なかったです。電話で交わした約束が切なかった…。
もしも…もしも…そう思わずにはいられなかったです。
時間がかかったけど、想いが伝わって良かったです。

<実業之日本社 2017.11>H30.2.9読了