眠れない夜は体を脱いで (文芸書)眠れない夜は体を脱いで (文芸書)
著者:彩瀬 まる
徳間書店(2017-02-08)
販売元:Amazon.co.jp

手が好きなので、あなたの手を見せてください!――不思議なノリで盛り上がる、深夜の掲示板。そこに集う人々は、日々積み重なっていく小さな違和感に、窮屈さを覚えていた。ほんとの俺ってなんだ――「小鳥の爪先」女という性になじめない――「あざが薄れるころ」不安や醜さが免除されている子はずるい――「マリアを愛する」社会の約束事を無視するなんて――「鮮やかな熱病」俺はいつも取り繕ってばかりだな――「真夜中のストーリー」連作短篇集。

彩瀬さんの書かれる連作短編集、堪能しました。どの作品も温かくて優しくて、でもとげがあるような作品。一つ一つの作品は異なりますが、深夜の掲示板「手が好きなので、あなたの手を見せてください!」というスレッドが目に留まるというところが共通点。そのスレッドを挙げた人に対する考え方は人それぞれ。それも面白かったです。
「小鳥の爪先」和海はイケメンで女性からはよく声をかけられ同性からは相手にされない。そして自分の顔が嫌いだった。和海君は上手く立ち回るのが苦手なんですかね。人が持っていないものを持っているというのは純粋に羨ましいのだけど、本人にとっては辛いものなのかもしれないですね。ゆかり先生と出会って良かったです。にしても梓という人は自分勝手ですね。横にかっこいい人を連れて周りに見せびらかしたいだけなんですよね。そして自分が別に欲しい人が出来たらあっさり手放す。同じ女性として最低だなと思いました^^;
「あざが薄れるころ」真知子は50歳を過ぎてから合気道を始めた。黒帯目指して数か月間組む相手は瀬尾という名の大学生だった。この2人が試行錯誤して上を目指そうとしているところ、可愛らしかったです。瀬尾は最初、真知子と組むことにもしかしたら多少違和感を感じていたのかもしれないけど、きっと最後は組んでよかったと思っているんじゃないかな。真知子は素敵な人でした。最後に母親に言った台詞がとても好きです。
「マリアを愛する」可愛くて優しくて切ない物語でした。マリアと香葉子の短い間の友情関係のようなものがとても良かったです。また、香葉子の誤解も解けてよかった。
「鮮やかな熱病」主人公の男性のことが不愉快でずっと嫌いだと思って読んでました。確かに見下すのは世間じゃなくて自分、おかしいと決めつけているのも自分。何でも自分の意見が正しいと思うなよと思いながら読んでいましたが、どうやら多少は気づいたようでほっとしました。
めぐみが言った言葉がとても印象的で。きっと私もこういう相手を求めていて、こういう人と一緒になりたいと思っているのかもと思いました。
「男の人が要らないんじゃなくて、男女という役割を脱いで、ただの対等な大人同士として尊重しあえる関係を作りたい」
「もしも結婚するなら世界一の親友だって思える人が良いです。その上で恋をしたい。
女として必要とされるだけなら、その人は別に私じゃなくても、そこそこ好みの女なら誰でもいいんですよ」
うまく言えないんですけど、私は結婚願望が無いんです。夫を欲しいと子供を欲しいと思わない。でも、パートナーなら欲しいかも…。どう違うのかと言われると困るのですが。
「真夜中のストーリー」アバターを作ったことで出会った人。深夜の掲示板のスレッドが出来た理由が分かります。なるほど。こちらも面白かったです。

<徳間書店 2017.2>H29.7.8読了