
著者:彩瀬 まる
新潮社(2016-09-21)
販売元:Amazon.co.jp
弱ったとき、逃げたいとき、見たくないものが見えてくる。高校の廊下にうずくまる、かつての少女だったものの影。疲れた女の部屋でせっせと料理を作る黒い鳥。母が亡くなってから毎夜現れる白い手……。何気ない暮らしの中に不意に現れる、この世の外から来たものたち。傷ついた人間を甘く優しくゆさぶり、心の闇を広げていく――新鋭が描く、幻想から再生へと続く連作短編集。
読みました。今までの作風とは少し違う感じでした。
現実のものではない少し不思議なものたちが出てきます。それでも、それが出てくるのは人間の弱い部分が出てきているからこそ。
弱みに付け込むじゃないけど、縋りたくなるようなものたち。
縋る瞬間があってもいいのだと思うけど、それでもそれに頼ってしまってはいけないんですよね。自分は生きていて、これからも生きていかなきゃいけないんだから。
最初のお話が読んでいて少し辛かったな。私ではないけど、身内で似たようなことがあったから。
心に傷を負った人たちが何かに縋ったとしてもそこに留まらず、少しでも前を向いて歩いていくことができますように。そんなことを思って読み終えました。
<新潮社 2016.9>H28.11.11読了
彩瀬さんにしては珍しくホラー風味で、ちょっと怖かったですが、怖がらせるためのホラーじゃなくて、人の心の弱さを描いていて、とても胸に迫って切なくなりました。やっぱり巧いですよね。さすが彩瀬さん!と思いました。