私のサイクロプス私のサイクロプス
著者:山白 朝子
KADOKAWA/角川書店(2016-03-31)
販売元:Amazon.co.jp

出ては迷う旅本作家・和泉蝋庵の道中。荷物もちの耳彦とおつきの少女・輪、三人が辿りつく先で出会うのは悲劇かそれとも……。怪談専門誌「幽」の人気連載に書き下ろし「星と熊の悲劇」を加えた九篇の連作短編集。

まさか続編が出るとは思いませんでした…。っていうか怖さと気持ち悪さが増してますね…。あー気持ち悪かった…。
「私のサイクロプス」蝋庵先生や耳彦とはぐれてしまった輪。輪を助けてくれたのは人の4倍ほどある一つ目の大男。何だか…嫌な予感がしたんですよねぇ…。「フランケンシュタイン」の怪物を思い出すような…。ただ、人と話がしたかっただけなのにね…。
「ハユタラスの翡翠」地元の人たちが翡翠が落ちていても持って帰らないようにと言われたにもかかわらず指にはめてしまった耳彦。相変わらずな奴ですねー。地元の人たちが良い人で良かったですよ。
「四角い頭蓋骨と子どもたち」いやー…子供たちが可哀想すぎました。遠い昔に障害をもって生まれてきた子供を見世物小屋に売っていたというのはなんとなく聞いたことがありましたけど…。妊婦にさせたことは許せないです。
「鼻削ぎ寺」いやー…読んでて吐きそうになりました…。いくら耳彦でもこんなことまでされる筋合いはないですよねー…。いやはや。いつ先生が助けてくれるんだろうと思ったらわりかし自力だったんでびっくりしました←
「河童の里」実際に河童伝説がある地域があったりするからそんな微笑ましい感じなのかと思ったらなかなかおぞましかったですね…。耳彦はもうなんというか懲りない奴ですねー。
「死の山」決して何があっても振りむいてはいけない目隠し山。そこをそ知らぬふりをして通り抜ける3人。途中であれ?と思いましたが、一体いつからだったんだろう。すっかり騙されました。その人はずっと出ることが出来ないんでしょうか…切ないですね。
「呵々の夜」またしてもはぐれてしまった耳彦が一晩泊めてもらおうとお邪魔した民家で両親と息子がどの話が一番怖いか教えてほしいと言われ、怖い話を聞くことに。怖い話も怖かったけど、耳彦が脱出したのにまたこの家族が現れたり、息子が好きだったものがもうひたすら気持ち悪かったです…。
「水汲み木箱の行方」体の弱い妻と幼い子供を置いて事故により死んでしまった男が家族に託したものはとても切なくてでも温かいものでした。耳彦も多少は悪いのかもしれないけど、でも女将さんは自業自得かなぁ。短編の中で1番怖くなかったかも…。そういう基準もおかしいけど^^;
「星と熊の悲劇」こちらだけ書き下ろしだったんですね。またしても山の中で迷ってしまった3人。山奥には道に迷った人たちだけでできた村がありました。そこで出会った湧水という女性。耳彦の自意識過剰はどうしたもんかと思いましたけど←でも結末はあまりに切なかったですね。三毛別羆事件を彷彿とさせるような…怖かった…。
蝋庵先生のお父さんの謎、本当だとしたらこの極度の迷い癖も納得です。風貌もどことなくイメージできてしまうかも。
それにしても蝋庵先生の生業が紹介されるたびに温泉地の本じゃなくて怪奇本出したほうが売れるのではないか?って突っ込みましたよ…。
そして今回もスピンは髪の毛のように細いですね。前回髪の毛にまつわる怖い話が出てきてそれを思い出しましたよ…。

<角川書店 2016.3>H28.5.11読了