大正箱娘 見習い記者と謎解き姫 (講談社タイガ)大正箱娘 見習い記者と謎解き姫 (講談社タイガ)
著者:紅玉 いづき
講談社(2016-03-17)
販売元:Amazon.co.jp

人と夢幻が共存した最後の時代。一人の少女が謎の詰まった箱を開く。
新米新聞記者の英田紺のもとに届いた一通の手紙。それは旧家の蔵で見つかった呪いの箱を始末してほしい、という依頼だった。
呪いの解明のため紺が訪れた、神楽坂にある箱屋敷と呼ばれる館で、うららという名の美しくも不思議な少女は、そっと囁いた――。
「うちに開けぬ箱もありませんし、閉じれぬ箱も、ありませぬ」
謎と秘密と、語れぬ大切な思いが詰まった箱は、今、開かれる。

大正時代の物語です。紅玉さんの作品では珍しい雰囲気がありました。
新聞記者の紺と箱屋敷に住むうららという女性との出会い。
物語全体が夢幻で儚い雰囲気があって素敵でした。
それでも作品は重たいです。
紺が抱える秘密と闇。それは後々明らかとなりますが、紺が決意した想いはとても重く辛い生き方だなと思いました。それでも紺はその生き方を選び、新聞記者として戦っていきます。紅玉さんの初期の作品の「雪蟷螂」のアルテシアを彷彿とさせました。
この時代が大正と考えると紺の生き方はしばらく辛いものになるかもしれませんが、それでもうららのように自分を心配して助けてくれる人がいるというのは大きな救いであると思います。
この作品は4編からなる連作短編ですが最初と最後にキーマンとなる人は同じ人でした。
都会に住んでいたが隔離された田舎へ嫁いだスミという女性。
紺にとっては何とかしたい、助けたいと思う人物だったのだと思います。
でも、スミが望んだ生き方は紺とは異なっていて。
答えや望みは決して一つではないんですよね。
うららが言ったように「みんながあなたのように強いわけじゃない」という言葉もまた重みがあります。
紺もうららの今後が気になるなぁと思っていたら、あとがきで続編が出ると書かれていて嬉しかったです。待ってます!

<講談社 2016.3>H28.5.8読了