王とサーカス王とサーカス
著者:米澤 穂信
東京創元社(2015-07-31)
販売元:Amazon.co.jp

2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?

「さよなら妖精」にも登場した太刀洗万智の物語です。
舞台は2001年ですか…私高校生だったなーくらいしか覚えていません^^;ましてやネパールで起きたこの事件についても全く知りませんでした。
偶然居合わせた国で起きた王族殺害事件。そしてひとつの死体。
ジャーナリストとして取材に乗り出す万智ですが、報道とは何かその真価を問われる事態に陥ります。そこで万智が悩み、下した決断はこれからの万智の生き方を決定づけるものとなった気がします。
王族の事件も気になりましたが、途中で事態が変わっていきましたよね。てっきり王族殺害事件について描かれた作品なのだと思っていたので…史実に関わってしまうからそこを追及するお話ではないんだなと途中で気づきました←
万智が遭遇したひとつの死体。
その被害者の犯人を万智が追求していきます。周りにいる人たちはみんな怪しく見えたんですけど、細かいところは置いておいて犯人自体はなんとなくわかりました。
犯人のくだりも切なくなったのですが、それよりも切なく悲しくなってしまったのはその後でした。犯人との対立よりも、そのあとのとある人物との対立の方がドキドキしてそして切なかったなと思います。
万智のジャーナリストとしての信念が問われる大きな出来事だったと思います。ジャーナリストという仕事がいかにたくさんの人の人生や想いを背負っているのか、知らされた気がします。
雲仙普賢岳の噴火はリアルタイムでは覚えていないのですが、この小説で犠牲になった人たちの事を知りました。報道というのは自分の身が危険になることもある。でも、他の人まで犠牲にしちゃいけない。とても胸に突き刺さりました。知らなかった…。
タイトルの「王とサーカス」のサーカスの意味。それはまた別の人物から万智が言われた言葉の中に含まれていることなのだけど、もうぐうの音も出ないというか^^;正論としか言いようがなかったですね。
でも万智は打ちのめされながらも自分の信念をもって闘い続けるんだろうなと思います。
「さよなら妖精」は正直全然覚えていないんですけど^^;
こちらは面白く読みました。

<東京創元社 2015.7>H27.10.13読了