朝が来る
著者:辻村 深月
文藝春秋(2015-06-15)
販売元:Amazon.co.jp
「子どもを、返してほしいんです」親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、だが、確かに息子の産みの母の名だった…。子を産めなかった者、子を手放さなければならなかった者、両者の葛藤と人生を丹念に描いた、感動長篇。
辻村さんの新刊。楽しみにしてました。続きが気になって気になって、あっという間に読んでしまいました。もったいなかったー。
辻村さん、お子さんが出来てから家族がテーマの作品が増えましたよね。前作は「家族シアター」ですし。自分が母という立場になったからこそ書ける作品なんだろうなと思います。
王様のブランチであらすじが少し紹介されていて、その気になる締め方はミステリ風味だったのですが、内容はミステリではなかったですね。
子どもが欲しくても出来ない人、子供が欲しかったわけではないのに出来てしまった人。
どうしてみんなが望む様にならないのかなと思います。
第一章と第二章は朝斗の育ての親栗原佐都子目線。第三章と第四章は朝斗の生みの親片倉ひかり目線で描かれています。
佐都子と清和の不妊治療の場面は読んでいて辛かったな。細かく取材されたんだろうなぁと思いました。初めは清和の他人事の雰囲気が凄く嫌でした。あさイチを見てそういうテーマをたくさん見てきたからかもしれない。結婚してないのに微妙に詳しくなってるもんだから^^;あんたが原因かもしれないんだよ!奥さん1人に抱え込ませないでよ!と思って読んでましたがすぐにその想いは消えました。朝斗が家族になってからの清和は別人ですね。
佐都子の母親の明け透けな言葉は嫌でしたねー。自然に子供が出来るのは34歳まで。そうやって年齢でぴしゃっと言われたら、私はショックだなぁ。子供は34歳までに産まないといけなくて、じゃあ33歳くらいまでに結婚しないといけなくて、それなら32歳までに彼氏を作らないといけなくて…って、人生を逆算するの私は嫌です。
私は結婚願望が無くて子供も欲しいと思ったことはないけど、でもきっと結婚をすることになったとしたら、同じようなことに直面することになるんだろうなとも思ったり。他人事とは思えませんでした。
最初、モンスターペアレントの話かと思ってドキドキしました。そういうお話なら読みたくないななんて思ってしまったのだけど。違ってよかった。でも、そうやって佐都子たちが朝斗を信じてまっすぐに育ててきたから、朝斗もちゃんといい子に育っているんでしょうね。
そしてひかりの章。
最初は身から出た錆とはいえここまで追い詰められる結果となってしまったのはあまりにも不憫だと思います。
子どもが出来てしまったことはひかりにも原因はありますが、相手だって悪い。
それに、親は最後までひかりという人間を一人の人としてとらえていなかった気がします。自分の保身なのか何なのか…。
子どもが子どもを産んで、その子どもが引き取られていなくなったからって全てが元通りになんてなるわけないですよね。お母さんなんて自分だって子供を産んでいるんだから辛さが分かるでしょうに。そして子供を産んだばかりの子供に高校受験の話をするって言うのも何だか気持ち悪かったなぁ…
まあそう思ってしまうのは私が親の目線に立ったことがないからで親の立場から見たら仕方ないのかもしれないですけど…
それでもちゃんとひかりという一人の人間と向き合うことがどこかにあればまた違ったんじゃないかなと思うんだけどなぁ。
それに、日本は性の部分をやたら隠そうとしますよね。汚らわしいもの、恥ずかしいもの。だから間違った知識を持った若い人が思わぬ妊娠をしたりしてしまうのだとも思います。いきなり変えるのは無理でも、望まぬ妊娠をして子供や産んだ母親が傷つかないために少しでも変えていった方が良いと思うなぁと、改めて思ったりしました。
ひかりの立場はもうこれからやってこないと思うけど、佐都子の立場はもしかしたらやってくるかもしれない。考えさせられる作品でした。
ラストは良かったけど、でもここで終わり!?とも思いました。
ひかりにもようやく「朝が来る」兆しが見えてきたけど、現状は何も変わっていないですから。未成年ではなくなったけど、まだ21歳で若いのだから、少しでも前を向いて生きていってほしいなと思いました。
大声で泣いているシーンは、ようやく心を許して泣ける相手を見つけられたんだとこちらも涙が出そうでした。
<文芸春秋 2015.6>H27.7.27読了
著者:辻村 深月
文藝春秋(2015-06-15)
販売元:Amazon.co.jp
「子どもを、返してほしいんです」親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、だが、確かに息子の産みの母の名だった…。子を産めなかった者、子を手放さなければならなかった者、両者の葛藤と人生を丹念に描いた、感動長篇。
辻村さんの新刊。楽しみにしてました。続きが気になって気になって、あっという間に読んでしまいました。もったいなかったー。
辻村さん、お子さんが出来てから家族がテーマの作品が増えましたよね。前作は「家族シアター」ですし。自分が母という立場になったからこそ書ける作品なんだろうなと思います。
王様のブランチであらすじが少し紹介されていて、その気になる締め方はミステリ風味だったのですが、内容はミステリではなかったですね。
子どもが欲しくても出来ない人、子供が欲しかったわけではないのに出来てしまった人。
どうしてみんなが望む様にならないのかなと思います。
第一章と第二章は朝斗の育ての親栗原佐都子目線。第三章と第四章は朝斗の生みの親片倉ひかり目線で描かれています。
佐都子と清和の不妊治療の場面は読んでいて辛かったな。細かく取材されたんだろうなぁと思いました。初めは清和の他人事の雰囲気が凄く嫌でした。あさイチを見てそういうテーマをたくさん見てきたからかもしれない。結婚してないのに微妙に詳しくなってるもんだから^^;あんたが原因かもしれないんだよ!奥さん1人に抱え込ませないでよ!と思って読んでましたがすぐにその想いは消えました。朝斗が家族になってからの清和は別人ですね。
佐都子の母親の明け透けな言葉は嫌でしたねー。自然に子供が出来るのは34歳まで。そうやって年齢でぴしゃっと言われたら、私はショックだなぁ。子供は34歳までに産まないといけなくて、じゃあ33歳くらいまでに結婚しないといけなくて、それなら32歳までに彼氏を作らないといけなくて…って、人生を逆算するの私は嫌です。
私は結婚願望が無くて子供も欲しいと思ったことはないけど、でもきっと結婚をすることになったとしたら、同じようなことに直面することになるんだろうなとも思ったり。他人事とは思えませんでした。
最初、モンスターペアレントの話かと思ってドキドキしました。そういうお話なら読みたくないななんて思ってしまったのだけど。違ってよかった。でも、そうやって佐都子たちが朝斗を信じてまっすぐに育ててきたから、朝斗もちゃんといい子に育っているんでしょうね。
そしてひかりの章。
最初は身から出た錆とはいえここまで追い詰められる結果となってしまったのはあまりにも不憫だと思います。
子どもが出来てしまったことはひかりにも原因はありますが、相手だって悪い。
それに、親は最後までひかりという人間を一人の人としてとらえていなかった気がします。自分の保身なのか何なのか…。
子どもが子どもを産んで、その子どもが引き取られていなくなったからって全てが元通りになんてなるわけないですよね。お母さんなんて自分だって子供を産んでいるんだから辛さが分かるでしょうに。そして子供を産んだばかりの子供に高校受験の話をするって言うのも何だか気持ち悪かったなぁ…
まあそう思ってしまうのは私が親の目線に立ったことがないからで親の立場から見たら仕方ないのかもしれないですけど…
それでもちゃんとひかりという一人の人間と向き合うことがどこかにあればまた違ったんじゃないかなと思うんだけどなぁ。
それに、日本は性の部分をやたら隠そうとしますよね。汚らわしいもの、恥ずかしいもの。だから間違った知識を持った若い人が思わぬ妊娠をしたりしてしまうのだとも思います。いきなり変えるのは無理でも、望まぬ妊娠をして子供や産んだ母親が傷つかないために少しでも変えていった方が良いと思うなぁと、改めて思ったりしました。
ひかりの立場はもうこれからやってこないと思うけど、佐都子の立場はもしかしたらやってくるかもしれない。考えさせられる作品でした。
ラストは良かったけど、でもここで終わり!?とも思いました。
ひかりにもようやく「朝が来る」兆しが見えてきたけど、現状は何も変わっていないですから。未成年ではなくなったけど、まだ21歳で若いのだから、少しでも前を向いて生きていってほしいなと思いました。
大声で泣いているシーンは、ようやく心を許して泣ける相手を見つけられたんだとこちらも涙が出そうでした。
<文芸春秋 2015.6>H27.7.27読了
ひかりの方は、わが子に愛情を持っているように思いました。
しかし、年齢が若すぎたから、どうしようもなかったんだろうと。
これからは、どちらも幸せになってほしいですね。