営繕かるかや怪異譚営繕かるかや怪異譚
著者:小野 不由美
KADOKAWA/角川書店(2014-12-01)
販売元:Amazon.co.jp

この家には障りがある―住居にまつわる怪異を、営繕屋・尾端が、鮮やかに修繕する。心ふるわす恐怖と感動の物語。
「奥庭より」亡くなった叔母から受け継いだ町屋。あるとき一人暮らしの私は気がつく。ふだんまったく使わない奥座敷に通じる障子が、何度閉めても――開いている。
「屋根裏に」古色蒼然とした武家屋敷に住む母親は言った。「屋根裏に誰かいるのよ」。最初は息子も嫁も孫娘も見えなかった。しかし…。
「雨の鈴」袋小路の奥に建つ古屋を祖母から受け継いだ。ある雨の日、鈴の音とともに喪服姿の女性が隣家の玄関先に立っているのを見掛けた。一目で、見てはいけないものだと分かった。
「異形のひと」亡くなった祖父の会計事務所を継ぐため、家族で郷里に帰った父。思春期真っ只中の真菜香は、何もかもが嫌だった。あるとき、見知らぬ老人が家の中のそこここにいるのを見掛けるようになった。
「潮満ちの井戸」麻理子は祖母の家を譲り受けた。夫和志は最近庭いじりにはまっている。庭には井戸があり使えるようにしてくれたのだがそれから不思議なことが起こり始める。
「檻の外」麻美は夫と離婚し4歳の娘杏奈とともに郷里に帰ってきた。しかし家族からは邪険に扱われ親戚から格安で借りたという借家に住み始めた。後輩が買ってくれた車の調子がおかしくまた勝手にシャッターが閉じるようになりイライラが募る。その時杏奈以外の子供の声が聞こえた。

小野さんの新刊。読むのを楽しみにしていました。
「幽」ブックスだし、小野さんの書かれる本は基本的に怖いので^^;ドキドキしながら読むのですが今回は怖いというよりは切ないという言葉の方が合うような気がします。
どの作品も古い家屋に住んでいる人が主人公で住まいに何かしらのトラブルが起きる。そこで困っているところにそう言った関係に強い営繕かるかやの尾端という若い青年がやってきてアドバイスをしてくれるという流れ。この尾端という青年がどんな悩みにも真摯に答えて真摯に修繕するのが良いなぁと思いました。
出てくる幽霊で1番悲しかったのは「異形のひと」かな。老人の生前の生活が悲しすぎて…。ちゃんと成仏して幸せになってほしいと思いました。
そして人間で許せないのは最後の「檻の外」麻美本人が言っていたけど、若気の至りにしてはちょっと仕打ちとしてはひどすぎるかな。貸す親戚も借りる両親もどうかしてる。それでも麻美はこれを機に変わりそう。新しい恋も出来ると良いな。

〈角川書店 2014.12〉H27.1.29読了