ほんとうの花を見せにきたほんとうの花を見せにきた
著者:桜庭 一樹
文藝春秋(2014-09-26)
販売元:Amazon.co.jp

少年「梗」を死の淵から救ったのは、竹から生まれた吸血鬼バンブーだった。心優しきバンブーと、彼に憧れる梗との楽しくも奇妙な共同生活が始まる。だが、バンブーにとって、人間との交流は何よりの大罪であった。

また不思議な作品を描かれましたねぇ…。
久しぶりの桜庭さんの新刊。堪能いたしました。
中国からやってきた竹から生まれた吸血鬼バンブーの物語。三作描かれています。
1作目は人間梗とムスタァ、英治の物語。2作目は梗が出会ったはぐれバンブー茉莉花の物語。そして最後はバンブーを統べる少年のような王の幼い頃の物語。
1作目が1番長編でしたがやはりこの物語が好きでした。梗とムスタァの関係が良かったですね。3人の暮らしがつつましくも幸せそうで良かったから、最後の3人の展開が悲しかったです。それでも梗なりに一生懸命生きて最後に住まいに戻り過ごした時間はかけがえのないものだったと思います。最後の最後も良かったです。
2作目も切なかったです。それでも最後に茉莉花は大好きな桃にきれいな花を見せることが出来て良かったんじゃないかなと思います。そしてようやく呪縛から解き放たれることが出来てそれも良かったと思いました。
3作目は始め誰のいつの時代の話なのか分からなくて戸惑いましたが途中で名前が出てきて、あぁ、この人の事かとわかりました。この過去の話と1,2話で登場した彼の印象が違いすぎて驚きました。長く生きている間に何かあったのか、それともバンブーという吸血鬼を守るということを最重視しているのか。もしくはお姉さんならこうしていただろうと遺志を継いでいるのか。
切なくて、でも素敵な物語でした。

〈文芸春秋 2014.9〉H26.10.19読了