名無しの蝶は、まだ酔わない    戸山大学〈スイ研〉の謎と酔理 (単行本)名無しの蝶は、まだ酔わない 戸山大学〈スイ研〉の謎と酔理 (単行本)
著者:森 晶麿
KADOKAWA/角川書店(2013-12-25)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
推理研究会めあてに戸山大学に入った坂月蝶子。だがうっかり酔いの追究が目的の〈酔理研究会〉なるサークルに入ってしまう。そこにいたのは不思議な雰囲気を持った幹事長で……。四季の行事を通じて描かれる青春歳時記!

うぅ…甘酸っぱかった。ゆるかったけど素敵だった。終始みんな呑んだくれていたけど面白かった。恋愛までいかないこの甘酸っぱくてじれったい感じ、大好物です。
森さんの新刊ということであらすじを一切知らない状態で読みました。
かつて子役として女優をしていた蝶子。大人になるにつれ挫折し、芸能界から身を引きます。そして推理研究会に入会するために戸山大学へ入学。スイ研だと言われ入ったサークルは酔理研究会。簡単に言うと飲んだくれているサークルです。そもそもこのサークルに入ったきっかけが先輩だけど同級生の神酒島に話しかけられたことがきっかけだった。神酒島は蝶子がかつて芸能界で女優をしていたことに気づいていた。そこで言葉を投げかけられる。
「蝶子、人生に何を望むよ?」と。蝶子が今まさに直面している問題だった。母の夢だった女優になり、芸能活動をしていたがそれは自分が望んだものではなかった。だからと言って実家の酒蔵を継ぐという気持ちがあるわけでもない。まずは大学生になって考えようとしている矢先の言葉だった。
サークルはただ呑んだくれているだけでそのせいで様々な厄介ごとに巻き込まれて行きます。毎回登場する謎はそこまで謎ではなく、私でさえも結末が読めたものもありました。謎も面白いのだけどその謎を通しての蝶子と神酒島の会話がとても好きです。
いつもは暇人でただの呑兵衛な神酒島なのに、蝶子に対してたまにものすごく深いことを言ったりする。本当は情熱家なのに、照れくさくてお酒でごまかしてるのかななんて思いました。
もう最後のシーンなんて素敵すぎます。きゅんきゅんしちゃいました。
何だよもう、最初からもう2人の関係は決まっていたようなものじゃないか。もうもうもう!
2人は恋人同士じゃなくてこんな可愛い先輩後輩(学年は同級生だけど)の関係を続けていってほしいなぁと思いました。
2人なんてまだ大学生だもの。若いんだから。1度挫折を味わっても、まだ人生は長い。
ゆっくりゆっくり、人とかかわりあって長いトンネルをいつか、抜け出してほしいと思いました。それを、自分の事のように感じて読み終えました。
は〜…良かったぁ。

〈角川書店 2013.12〉H26.2.10読了