
著者:似鳥 鶏
幻冬舎(2013-09-04)
販売元:Amazon.co.jp
証拠よりメレンゲを、手錠よりケーキを。
パティシエに転向した繊細すぎる元・刑事。
事件解決の裏には、必ず彼がいる。
警察を突然辞めた惣司智は兄の季が継いだ喫茶店でパティシエとして働き始めた。鋭敏な推理力をもつ智の知恵を借りたい県警本部は秘書室の直ちゃんを送り込み難解な殺人事件ばかり相談させている。弟をお菓子作りに専念させたい兄は、なくなく捜査の手伝いを。人の良い兄の困り果てた事態を見かねた弟は、しぶしぶ事件解決に乗り出す羽目に……。
華麗な解決と究極のデザートを提供する、風味豊かなミステリー。
「喪服の女王陛下のために」中沢正樹が崖から転落死した。転落した場所は自殺とも他殺ともとりづらく、捜査は難航した。季と直ちゃんはすでに全員のアリバイは成立していたが、学校の同級生や彼女に再度聞き込みにあたる(ヴィクトリアン・サンドウィッチケーキ)
「スフレの時間が教えてくれる」南逸郎という男が殺された。第一発見者は被害者と釣りに行こうとしていた手嶋慎也で、容疑者と疑われていた。だが現場近くには大量のたばこの吸い殻が残っていたのだが彼は非喫煙者で犯人は別にいるのではないかと疑う(スフレ)
「星空と死者と桃のタルト」みんなで直ちゃんの親せきが所有しているログハウスへ束の間の休暇を過ごそうとしていた一向。その地域で揉め事が起きているようだった。そしてその日、山奥の小屋で人が殺されているのを見つけてしまう(タルト・タタン)
「最後は、甘い解決を」20年前、母親を殺された。更にその13年後に母親代わりをしてくれた女性も殺された。凶器はどちらも同じ拳銃が使用され同一犯ではないかと言われていたが迷宮入りしていた(モンブラン)
なんだかシリーズ化されそうな感じの作品ですね。弟君がそもそもどうして警察を辞めたのかという根本的な理由が詳細には書かれていなかったのでこれから明らかになるんでしょうか。まあ、凄く繊細だから耐えきれなかったのかなとも思うのだけど。
似鳥さんの作品は大好きなのだけど今回は葉山君シリーズや動物園シリーズのようなユーモアが少なくてひたすら事件がブラックで後味が悪いっていう印象かな。出てくる人たちは凄く個性的で良かったのだけど。
作品はどれもよかったです。
事件のトリックに関しても面白かった。
ただ、事件の中に直接ケーキが登場するというわけではなかったのでお腹がすいて仕方がないという事はなかったかな^^;2つ目の事件はスフレが関係してはいますけど。
最後に登場したケーキの歴史が書かれていて、NHKのお菓子にまつわる番組(グレーテルのかまど)が大好きなのでとても興味深かったです。
それでもなかなかヘビーでした。似鳥さんの作品を読んだことがなくて表紙をみて読もうと思った方はビックリするかも^^;これが似鳥さんの作風でもあるんですけどねー。特に最後がなかなかのブラックで後味悪い悪い。途中からもしや…とは思ったけども。
ただ、智は刑事じゃなくなったことで言い方は悪いけど責任がなくなった。だから直ちゃんたちに利用されてもいるのだけど、最後にあんな言葉をかけることもできて、そこは救われたんじゃないかなと思います。刑事だったら決して言えないもの。
色々かいちゃってるけど面白く読みました。ただ外見と中身のギャップは結構激しいので似鳥さん初読みの方は気を付けて読んだ方が良いかもですね。
そしていつも楽しみにしている似鳥さんのあとがき。今回もぶっ飛んでいて面白かったです。
〈幻冬舎 2013.9〉H26.1.10読了
兄が大変そうだから、少しでも喫茶店を手伝って
あげたかったとかなのかなぁ。精神的な理由も
大きそうですけども。
出て来るお菓子が、ほんとに美味しそうでしたね〜。
美形兄弟の推理物語ってことで、そのうちどこかの局で
ドラマ化しそうです^^;
あとがきは相変わらず面白かったですね。これを
楽しみにしている読者も多そうです(笑)。