眠りの庭 (単行本)眠りの庭 (単行本)
著者:千早 茜
角川書店(2013-11-23)
販売元:Amazon.co.jp

「アカイツタ」美大を卒業したものの、画家になることもなくくすぶっていた萩原は、美術評論家の真壁教授の紹介で、女子校の臨時教員として勤めることになる。美術準備室で見つけた、暗い目でこちらを見つめる少女の絵。自画像だと思ったそれは、謎の死を遂げた鈴木という女生徒が、真壁教授の娘・小波を描いたものだった。やがて萩原は小波に惹かれていくが、彼女には誰にも言えない秘密があった…。
「イヌガン」大手家電メーカーに勤める耀は、年上の彼女、澪と一緒に暮らして3年になる。掴みどころのない澪だったが、その穏やかな日々に満足していた。しかし、澪がときおり漏らす本音と怪しい行動に、耀は少しずつ不安を抱いていく。ある日、澪を尾行した耀は、思いがけない場面を目撃することになる…。過去を背負った哀しき女と、彼女に囚われていく男たち。2つの物語がつながったとき、隠された真実が明らかになる。あふれ出す情感を描き切った、心ゆさぶる墜落と再生の物語。

いやー…凄い作品でした。そんなに長いお話じゃないんですけど凄く長く感じました。
この作品には2編収録されています。異なる話ではなく、繋がっています。
私は2編目を読んだときに出てくる女性は前作に出たある人を想像していたのですが違っていました。私が鈍いだけなのかもしれませんがそこでやられたと思ったのと、2編のつながり具合が本当に見事だなと思ったんです。
ネタバレになっちゃいますが1編目は凄く気になるところで終わります。
ここで終わるの?と思うような、ここで終わってもいいような。
そこからの2編目の流れが本当に良いです。
1編目の謎に包まれているのも好きですが、2編目の耀と澪の関係が凄く好きでした。
耀のまじめなところ、凄く好感が持てました。耀が澪に内緒でとある場所へ行くのですが、そこで耀は「同じ後ろめたさを抱えるためです」と言うんです。その言葉が凄く心に響きました。
あぁ、この人は本当に彼女のことが大事で、一生を共にしたいと思っているんだと思って、感動したんです。
最後の最後もちょっとドキドキするのですが、この2人には幸せになってほしいと思って読み終えました。

〈角川書店 2013.11〉H25.12.26読了