泣き童子 三島屋変調百物語参之続泣き童子 三島屋変調百物語参之続
著者:宮部 みゆき
文藝春秋(2013-06-28)
販売元:Amazon.co.jp

「魂取の池」おちかと同じ年のころの娘が、三島屋を訪れた。聞けば、自分が幼馴染のところへ嫁に行く前に、誰かにどうしても聞いてほしい話があると言う。それは、娘の祖母がいた岩槻にある、必ず男の気持ちが離れてしまうという池にまつわる言い伝えだった。そして、娘は、戒めを守らなかった祖母の身に起きた不思議な話を語り始める。
「くりから御殿」灯庵が連れてきた今回の客は、老境に差し掛かった上方の出の商人と妻。妻を次の間に置き、語りはじめた商人は、漁師町の生まれであったが十歳の頃に山津波で、一族親類を亡くし、天涯孤独の身となって地元の網元の屋敷へと引き取られることとなった。だが、大きく古い網元の屋敷で、不可思議な出来事に遭遇することとなる。
「泣き童子」三島屋で瀕死の老人が行き倒れた。店総出の看病の甲斐もあって、ようやく息を吹き返した老人だが、よくよく聞けば三島屋の評判を聞いて訪れたとのことだった。ようやく身を起こすまでに回復した老人が、虫の息ながら、意を決したように語り始めたのは、老人が引き取った、ある幼子についての、哀しくも恐ろしい話だった。
「小雪舞う日の怪談語り」黒子の親分がやってきて、「心の煤払い」と称して札差が主催する怪談語りへとおちかを誘う。最初は、出かける気もないおちかだったが、青野の若先生も来ると聞き、心が動く。その様子を見た三島屋の連中もなんとか、おちかを送り出そうとやっきになり、おちかは、お勝を連れていくことを条件に怪談語りの会へと向かうことにする。
「まぐる笛」北国生れの侍が、おちかの評判を聞いてやって来た。おちかから見ると少年にすら見える侍は、なぜか落ち着かずなかなか顔を上げてくれない。なんとかとりなそうとするおちかの様子に、ようやく話はじめた侍は、顔を真っ赤にしながら、お国訛りで故郷の山で出会った、江戸では思いもよらない獣の話を訥々と語り始めた。
「節気顔」半年前に夫を亡くしたという女が話を聞いてほしいと三島屋を訪れた。だが、語りたいのは夫についてではなく、自分の叔父の身に起きた出来事であるという。叔父は長男だったが放蕩の限りをつくし、生家を追い出されたが、なぜか、三十半ばを過ぎたころ正気を取り戻し、兄弟である女の父を頼って、三両で一年だけ身を置かせてほしいと頼みに来たという。

大好きなシリーズ、第3弾です。この作品はいつまで続くんでしょうね。
百物語まで行くんだったら何年かかるかわかりませんが^^;
どの作品も面白かったです。面白いとはいえない怖いものもありましたが。
おちかも18歳になったんですね。2年経った設定になっていました。
おちかのお客さんへの対応が素晴らしいです。
心に深い深い傷を負っていて、治ることはきっと一生ないのだろうけど、でも少しずつ前を向き始めているおちか。とても魅力的な女性です。
今回の作品も、どれもよかったです。
「魂取の池」のやきもち焼きの女の子はかわいかった。「くりから御殿」は東日本大震災を彷彿とさせていた気がします。親兄弟、友人すべてを失った少年。幼き頃からずっと抱いていた思いを誰かに伝えたかったんでしょうね。奥さんの言葉が素敵でした。「泣き童子」はただただ童子が可愛そうです。その子が悪いわけではないのに。読み終えたときにぞぞっとしました。「小雪舞う日の怪談語り」はお話も面白かったですが、若先生との会話が気になりました。想いを寄せているなら行動したっていいと思うんですけど・・・まだ早いのかな。「まぐる笛」訛りまくっているお侍さんはかわいかったのだけどお話は全然可愛くなくてひたすらぞぞっとしてました。怖かった…「節気顔」切ないけれど温かいお話だったと思いました。おちかはいつの日か、婚約者だった人と向き合う時が来るのでしょうか。
これからどうなるのか、またどんなお話が聴けるのか楽しみです。

〈文芸春秋 2013.6〉H25.9.9読了