土蛍 猿若町捕物帳
著者:近藤 史恵
光文社(2013-06-19)
販売元:Amazon.co.jp
「むじな菊」同心・玉島千蔭のもとに長屋の差配人・銀治という男から頼み事が持ち込まれた。彼の店子である新粉細工師の長六・良江夫婦と、良江の兄・作二郎の諍いを仲裁して欲しいという。
一方、吉原で火事が起き、その被害に遭った青柳屋の花魁・梅が枝が、他の遊女たちと武家屋敷に避難しているという話を聞く。そんな中、千蔭が作二郎と会いに行く前に、銀治が何者かに殺されてしまい、千蔭は捜査に乗り出す。
「だんまり」髷を切られるという事件が続いていた。その被害者である北大門町の油屋井筒屋の手代・伴蔵に話を訊きに出かけた千蔭。その帰り、中村座付きの作者・桜田利吉と娘が橋の上で言い争うのを止めたが、夕方利吉が相談に現れた。その娘は破門された兄弟子・利十郎の妹・お鈴。他に身寄りのない兄妹のふたり暮らしだが、利十郎こと権三は博打好きで巴之丞が借金を代わりに返しても、すぐに借金を作り既に見放されているらしい。どうやらお鈴を吉原に売るつもりらしい権三。そんなお鈴を玉島家でしばらく預かることにした。
「土蛍」中村座を訪れた千蔭は、人気女形・水木巴之丞から梅が枝の身請け話を聞かされる。二ヶ月ほど前、火事で焼け出された折に身を寄せていた屋敷の主・旗本の小野外記が身請けするというのだが、彼は梅が枝の同輩の遊女・雛鶴のなじみであったはず。他の女に心移りを嫌う世界であるはずなのに…。
一方、上方から中村座にやってきた岩井杉蔵は、女ぐせが悪く、あちこちに女を作っては捨てているという評判の悪い男がいた。
そんな中、杉蔵の弟子・新八が舞台のスッポンで首をくくるという事件が発生。女房のおりょうは杉蔵の女だったが、彼の子どもができるとともに捨てられたところで、新八が所帯を持ったという。しかし新八はそんな境遇を不満に思うことなく、むしろ喜んでいたというのだが。
「はずれくじ」怪我をして大工をやめ、棒手振りの八百屋をしていた直吉。しかし客がつかない貧乏暮らしで皆に見放される中、隣に棲むはる坊だけがやさしく接してくれた。
ある日、同じ長屋の後家・お米から富くじを一緒に買わないかという話を持ちかけられた直吉だったが、その後遺体となって見つかる。お米から富くじの話を聞いた千蔭はその行方を探すことにする。
猿若町捕物帳シリーズ第5弾です(多分)と言っても私は初期の方は読んでいないので千蔭と巴之丞と梅が枝の出会いはいまだに分かっていないのですが^^;
同心千蔭の元にやってくる事件の数々。千蔭の機転で解決していくのですが何とも後味が悪くて切なくなるお話が多いですね。
そんな中でも千蔭には歳の離れた妹、おたつが生まれてそこは少し癒されます。
梅が枝は相変わらず情に厚くてかっこいいです。無理かもしれないけどやっぱり2人の進展に期待したいです。まあ、身分関係なく千蔭は真面目すぎて鈍すぎるから、どうかなと思うけど…
一番印象的だったのはやっぱり表題作の「土蛍」かな。梅が枝の身を挺して後輩を守った姿がかっこよかった。事件は切なくて悲しかったけど。
でも、ここで終わればよかったのにどうして「はずれくじ」が最後添え物のように入っていたのか。ここだけなんだか異質というか番外編のように感じました。こんな軽く言ったら死んだ人が可哀想だけど…
〈光文社 2013.6〉H25.7.20読了
著者:近藤 史恵
光文社(2013-06-19)
販売元:Amazon.co.jp
「むじな菊」同心・玉島千蔭のもとに長屋の差配人・銀治という男から頼み事が持ち込まれた。彼の店子である新粉細工師の長六・良江夫婦と、良江の兄・作二郎の諍いを仲裁して欲しいという。
一方、吉原で火事が起き、その被害に遭った青柳屋の花魁・梅が枝が、他の遊女たちと武家屋敷に避難しているという話を聞く。そんな中、千蔭が作二郎と会いに行く前に、銀治が何者かに殺されてしまい、千蔭は捜査に乗り出す。
「だんまり」髷を切られるという事件が続いていた。その被害者である北大門町の油屋井筒屋の手代・伴蔵に話を訊きに出かけた千蔭。その帰り、中村座付きの作者・桜田利吉と娘が橋の上で言い争うのを止めたが、夕方利吉が相談に現れた。その娘は破門された兄弟子・利十郎の妹・お鈴。他に身寄りのない兄妹のふたり暮らしだが、利十郎こと権三は博打好きで巴之丞が借金を代わりに返しても、すぐに借金を作り既に見放されているらしい。どうやらお鈴を吉原に売るつもりらしい権三。そんなお鈴を玉島家でしばらく預かることにした。
「土蛍」中村座を訪れた千蔭は、人気女形・水木巴之丞から梅が枝の身請け話を聞かされる。二ヶ月ほど前、火事で焼け出された折に身を寄せていた屋敷の主・旗本の小野外記が身請けするというのだが、彼は梅が枝の同輩の遊女・雛鶴のなじみであったはず。他の女に心移りを嫌う世界であるはずなのに…。
一方、上方から中村座にやってきた岩井杉蔵は、女ぐせが悪く、あちこちに女を作っては捨てているという評判の悪い男がいた。
そんな中、杉蔵の弟子・新八が舞台のスッポンで首をくくるという事件が発生。女房のおりょうは杉蔵の女だったが、彼の子どもができるとともに捨てられたところで、新八が所帯を持ったという。しかし新八はそんな境遇を不満に思うことなく、むしろ喜んでいたというのだが。
「はずれくじ」怪我をして大工をやめ、棒手振りの八百屋をしていた直吉。しかし客がつかない貧乏暮らしで皆に見放される中、隣に棲むはる坊だけがやさしく接してくれた。
ある日、同じ長屋の後家・お米から富くじを一緒に買わないかという話を持ちかけられた直吉だったが、その後遺体となって見つかる。お米から富くじの話を聞いた千蔭はその行方を探すことにする。
猿若町捕物帳シリーズ第5弾です(多分)と言っても私は初期の方は読んでいないので千蔭と巴之丞と梅が枝の出会いはいまだに分かっていないのですが^^;
同心千蔭の元にやってくる事件の数々。千蔭の機転で解決していくのですが何とも後味が悪くて切なくなるお話が多いですね。
そんな中でも千蔭には歳の離れた妹、おたつが生まれてそこは少し癒されます。
梅が枝は相変わらず情に厚くてかっこいいです。無理かもしれないけどやっぱり2人の進展に期待したいです。まあ、身分関係なく千蔭は真面目すぎて鈍すぎるから、どうかなと思うけど…
一番印象的だったのはやっぱり表題作の「土蛍」かな。梅が枝の身を挺して後輩を守った姿がかっこよかった。事件は切なくて悲しかったけど。
でも、ここで終わればよかったのにどうして「はずれくじ」が最後添え物のように入っていたのか。ここだけなんだか異質というか番外編のように感じました。こんな軽く言ったら死んだ人が可哀想だけど…
〈光文社 2013.6〉H25.7.20読了