桜ほうさら桜ほうさら
著者:宮部 みゆき
PHP研究所(2013-02-27)
販売元:Amazon.co.jp

舞台は江戸深川。
主人公は、22歳の古橋笙之介。上総国搗根藩で小納戸役を仰せつかる古橋家の次男坊。
大好きだった父が賄賂を受け取った疑いをかけられて自刃。兄が蟄居の身となったため、江戸へやって来た笙之介は、父の汚名をそそぎたい、という思いを胸に秘め、深川の富勘長屋に住み、写本の仕事で生計をたてながら事件の真相究明にあたる。父の自刃には搗根藩の御家騒動がからんでいた。
ミステリアスな事件が次々と起きるなか、傷ついた笙之介は思いを遂げることができるのか。「家族は万能薬ではありません」と語る著者が用意した思いがけない結末とは。
厳しい現実を心の奥底にしまい、貸本屋・治兵衛が持ってきたくれた仕事に目を開かれ、「桜の精」との淡い恋にやきもきする笙之介の姿が微笑ましく、思わず応援したくなる人も多いはず。
人生の切なさ、ほろ苦さ、そして長屋の人々の温かさが心に沁みる物語。

読みました。分厚かったですが読みやすくてするすると読むことが出来ました。
故郷で父が無実の罪を着せられて亡くなったため、笙之介は故郷を離れ江戸で暮らすことになります。その長屋で出会った人々がとても温かいです。笙之介の元に厄介ごとが舞い込んできますが、笙之介の人の良さと周りのサポートで解決していきます。
笙之介は故郷は追われてしまったけど、このままこの地で皆さんと一緒に暮して行けたら良いんじゃないかなーなんて穏やかな気持ちになったのですが。
父親と同じ筆跡を書いた代筆屋が突然笙之介の前に現れてから、父親を殺そうと企てた元々の犯人が明らかになります。
そこからが本当に切なくて切なくて…悲しくて、涙が出ました。
笙之介の存在を真っ向から否定する人。武士だけど、腕っぷしは弱くて平和主義な笙之介が気に入らないのは分かりますけど、でもそういう人いたって良いじゃないですか。どうして生きるだけでもダメなの。と思わずにはいられなかったです。
腕っぷしはなくても、武士らしくなくても、それでも笙之介には家族のように見守ってくれている人たちがたくさんいる。それが改めて分かったラストでもあって最後の最後はほっとできて良かったです。
おきんちゃんには気の毒だけど、和香との関係も可愛らしくて好きでした。このままゆっくり2人の関係も変わっていったらいいなと思います。
最後まで読んで改めて、タイトルがピッタリだなと思いました。

〈PHP研究所 2013.2〉H25.6.5読了