ロスト・ケアロスト・ケア
著者:葉真中 顕
光文社(2013-02-20)
販売元:Amazon.co.jp

介護に追い詰められていく人々、
正義にしがみつく偽善者、恨みも憎しみもない殺人、正しい者は一人もいない。
人間の尊厳、真の善と悪を、今も生きるあなたに問う!
圧倒的な筆致で、社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、堂々たる社会派、見事に裏切ってくれる本格推理、魂に揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声!

以前王様のブランチで紹介されて気になったので読みました。
面白かったけど、面白かったというのは何だか不謹慎というかなんというか…言いにくいけども。
冒頭は43人もの高齢者を殺害した<彼>に死刑判決が下されるところから物語が始まります。
<彼>に殺された高齢者たちは要介護3以上で認知症になっている人達。
彼に肉親を殺されたことで救われたという人たちもいる。
何が正しくて何が間違っているのか、読んでいたら分からなくなりました。
もちろん人を殺すことは悪い事。罪に問われること。でも<彼>が言ったことを目の前で話されたら、私は何も言い返せないと思う。
検事が言う言葉も正論なのに、綺麗事にしか感じなかったり。
私もまだ親が元気だから綺麗事しか言えない「安全地帯」にいる人間なんだと思う。
犯人が誰なんだろうと思って気にはなったけど、でもミステリというとちょっと違うような気がする。犯人も大体絞れるし、展開もよめなくもないので壮大なテーマなのにちょっともったいないなと思いました。
でも、介護問題についてはとてもリアルで今の日本社会に問題提起する形だったのは、読者はちょっと物足りないけど、社会でこの作品が話題になるのは良かったかなと思います。
確か著者さんもおじいさんの介護をされていたんですよね。それがこの作品に生かされているとおっしゃっていたと思います。
これから出される作品も手に取ってみたいかなと思います。

〈光文社 2013.2〉H25.5.31読了