
著者:加藤 千恵
小学館(2013-02-13)
販売元:Amazon.co.jp
オススメ!
様々な「卒業」を描いた13ストーリーズ
吹奏楽部の1年後輩の男子に密かに思いを寄せる先輩女子が、告白できずに卒業していく「流れる川」。離婚する妻が夫との最後の会話のなかで、下の名前ではなく「あなた」と呼ばれたことを印象に残す「春の雨」。二十八歳の娘が、仲の良い母の再婚を自分のなかでようやく祝福できる気持ちに至る「母の告白」。
女性アイドルグループのメンバーがソロ脱退することを知った、ある女子ファンの心情を追った「にじむオレンジ」。仲良しの少し不良の女子高生から、上京してしまうために様々なプレゼントをもらうことになる女子小学生を描いた「屋上で会う」。――単なる卒業式、恋愛絡みに留まらない、様々な年齢、様々なシチュエーションのそれぞれの卒業模様を精緻に描きとった、どこからでも読むことのできる1話完結13話からなる短編集。
3月1日から新しい職場に勤め始めて、早起きになって通勤時間がちょっと短くなって覚えることがたくさんあって、最近なかなか本を読めずにいます。
そんな中、久しぶりに1日で一気読みしてしまいました。活字に飢えていたのかな。
加藤さんの作品は何冊か読んでいますが、私、とても好きです。
文章との相性が良いのかもしれません。
ちょうど卒業シーズンに読めて、良かったような、良すぎて寂しいような…。
短いお話しばかりなんですが、どの作品も素晴らしかったです。
学校の卒業は初めの1編だけであとは様々な卒業が描かれていました。
どの作品もちょっと切なくて温かくて。
何だかうるっと涙が出てきそうな作品ばかりでした。
私も、今、卒業したいものがあります。
この物語の主人公たちのように、ちゃんと卒業できるのだろうか。
うじうじして前に進めない自分の背中を、優しくぽんと押してくれたような作品でした。
〈小学館 2013.2〉H25.3.12読了