
著者:伊吹 有喜
ポプラ社(2012-11-07)
販売元:Amazon.co.jp
父を亡くし母に捨てられ、祖父に引き取られたものの、学校ではいじめに遭っている耀子。夫を若くして亡くした後、舅や息子と心が添わず、過去の思い出の中にだけ生きている照子。そして、照子の舅が愛人に生ませた男の子、立海。彼もまた、生い立ちゆえの重圧やいじめに苦しんでいる。時は一九八〇年、撫子の咲く地での三人の出会いが、それぞれの人生を少しずつ動かしはじめる―『四十九日のレシピ』の著者が放つ、あたたかな感動に満ちた物語。
読みました。
代々林業で栄えてきた遠藤家の跡取りである立海と山の管理人の孫娘耀子、そして遠藤家の跡継ぎだった夫龍一郎を亡くし、遠藤家の敷地を管理することになった『おあんさん』こと照子の主に三人が、常夏荘で過ごす日々について語られています。
ゆったりとした時間が流れている常夏荘。でも、ここに住む立海も耀子もいじめに遭っていて心にフィルターをかけている部分がありますし、照子も夫を亡くして夫の残り香を感じながら生きています。照子と夫龍一郎の関係がとても素敵でした。新婚旅行での会話も龍一郎の晩年の2人も。2人にはもっと長く幸せに暮らしてほしかったなと思いました。
立海と耀子も身分は違えど悩んでいる根底は同じで、二人とも自分の殻の中に閉じこもる傾向がありました。でも、二人で過ごしていくうちにその殻が破られていきます。家庭教師の青井という女性も大きく関わっていました。登校拒否をする耀子を何とかしようと頑張る青井。照子はどうしてそこまであの子に尽くすのかと疑問を抱きますが、その理由も読んでいくうちに分かっていきます。
最終的に大人に翻弄されて立海も耀子も可愛そうでした。でも、2人ともちゃんと前を向いていたので良かったです。
素敵な物語でした。伊吹さんの描かれる作品好きです。「風待ちのひと」も読みたいと思っているのですが・・・来年は読めるかな?
〈ポプラ社 2012.11〉H24.12.20読了