サエズリ図書館のワルツさん 1 (星海社FICTIONS)
著者:紅玉 いづき
講談社(2012-08-17)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
オススメ!
本が手の届かないほど遠くにあると思っていたこと。本が母と娘を繋ぐ絆であったこと。本が祖父への畏れであり、忘れ得ぬ思い出であったこと。そして、強すぎる願いゆえに、たった一冊の本すら手放せないこと。そこにあるすべての本には数え切れない“想い”があり、そこに集うすべての読者にはその数だけの“物語”があった。さえずり町のサエズリ図書館。それは本の“未来”が収められた、美しく、不思議な図書館。紅玉いづきが詠う、すべての書物への未来譚―。あなたにとって大切な一冊は、きっとここでみつかる。
「サエズリ図書館のカミオさん」上緒さんは今日はついてなかった。仕事で怒られ、立ち寄った場所に駐車しようとしたら、隣の車にぶつけてしまった。おまけにヒールまで取れてしまった。でも、当て逃げだと思われたくない。停めた場所は図書館の駐車場だった。上緒さんは仕方なく1度も入った事のない図書館へ入る。
「サエズリ図書館のコトウさん」古藤さんは小学校の先生で娘と離れて暮らしている。古藤さんは近所に建つサエズリ図書館へ行くのが楽しみだった。そこには小学生くらいのハーフの兄妹がいつもいた。学校へ行っていないのか、何だか気になる存在だった。
「サエズリ図書館のモリヤさん」森屋さんは片道2時間以上かけてサエズリ図書館に向かっていた。そこには祖父森郷朗の寄贈した本が遺されている。森屋さんは、その本はワルツさんの父親、義昭に盗られたと考えていた。
「サエズリ図書館のワルツさん」割津さんは図書館から盗まれた本を取り返すため、自分がかつて住んでいた都市部(シティ)へ向かう。道中、シティにいた時の事を思い出す。
自分の手元にも置いておきたかったけど、この本は図書館に置いてほしいと思い、リクエストして図書館に所蔵してもらうことになりました。
舞台は今よりも何十年か先の近未来。本は貴重なものとなり、授業でも生活の中でも電子書籍が主流となっている時代。そんな時代に時代錯誤ともいうべき本が大量に所蔵されている図書館。そこには特別探索司書のワルツさんという女性がいました。
ワルツさんの知識の幅広さも素晴らしいですが、何よりも本を誰よりも愛していることが伝わってきます。1ページ1ページ大事に読みたいと思わせてくれる作品でした。
後々分かることですが、著者はいつか本というもの自体が無くなってしまうのではないかという心配を抱える病気を持っているということでこの作品が生まれたそうです。
私も不安に思っていた時期がありました。今までも電子書籍が出てきてはいましたがそこまで浸透していなかったのでまだ大丈夫だと思っていたのですが。ここ数年で徐々に侵攻してきていますよね。だから本というものが無くなるんじゃないか、図書館という場所が必要なくなるんじゃないかと、そう思ってました。
でも、私は今はそうは思いません。電子が全てではありませんし、データだけが全てではないですよね。特に名久井さんというブックデザイナーの存在を知ってから本が出来るまでの数々の工程を知り、無くなるんじゃないか、じゃなくて無くしてはいけないと思うようになりました。
それに以前も書きましたが、私はパソコンで文字を打つと何度も確認しているのに誤植が出てしまうときがあります。それくらい、パソコン等の電子機器から発せられる文字って私の頭の印象に残らないんです。ちゃんと本を読んで紙に記されている文字を読み取っていくことで文字が頭に残る気がするんです。
そう思っている人はきっと私だけではないはず。それに、本を友人と面白かったと共有するのって楽しいんです。私は、その想いを失くしたくないと思います。
私はワルツさんの想いまで強いものは持っていないですが、ワルツさんの本を愛する気持ちは痛いくらいに伝わってきました。ワルツさんにはサエズリ図書館でずっと父親の遺した大好きな本たちに囲まれて、ずっと本を守ってもらいたいなと思います。
どの章もとても素敵なお話でした。今まで全く本を読んだことがなかったカミオさんが徐々に本が好きになっていく様子は読んでいて嬉しかったですし、コトウさんの本に対する想いも好きでした。モリヤさんは初めは嫌な印象でしたけど、祖父への愛情を感じました。
上手く言葉で表現が出来ないのがとても残念です。でも、紅玉さんが書かれたあとがきを読んで、私も同じ気持ちでいることに嬉しさを感じました。紅玉さんも図書館で働かれていたことがあるんですね。勝手に親近感を感じました。
1ということは、これからも続いていくんですよね。またワルツさんに会えること、サエズリ図書館に入館できるのを楽しみにしています。
〈講談社 2012.8〉H24.9.10読了
著者:紅玉 いづき
講談社(2012-08-17)
販売元:Amazon.co.jp
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本が手の届かないほど遠くにあると思っていたこと。本が母と娘を繋ぐ絆であったこと。本が祖父への畏れであり、忘れ得ぬ思い出であったこと。そして、強すぎる願いゆえに、たった一冊の本すら手放せないこと。そこにあるすべての本には数え切れない“想い”があり、そこに集うすべての読者にはその数だけの“物語”があった。さえずり町のサエズリ図書館。それは本の“未来”が収められた、美しく、不思議な図書館。紅玉いづきが詠う、すべての書物への未来譚―。あなたにとって大切な一冊は、きっとここでみつかる。
「サエズリ図書館のカミオさん」上緒さんは今日はついてなかった。仕事で怒られ、立ち寄った場所に駐車しようとしたら、隣の車にぶつけてしまった。おまけにヒールまで取れてしまった。でも、当て逃げだと思われたくない。停めた場所は図書館の駐車場だった。上緒さんは仕方なく1度も入った事のない図書館へ入る。
「サエズリ図書館のコトウさん」古藤さんは小学校の先生で娘と離れて暮らしている。古藤さんは近所に建つサエズリ図書館へ行くのが楽しみだった。そこには小学生くらいのハーフの兄妹がいつもいた。学校へ行っていないのか、何だか気になる存在だった。
「サエズリ図書館のモリヤさん」森屋さんは片道2時間以上かけてサエズリ図書館に向かっていた。そこには祖父森郷朗の寄贈した本が遺されている。森屋さんは、その本はワルツさんの父親、義昭に盗られたと考えていた。
「サエズリ図書館のワルツさん」割津さんは図書館から盗まれた本を取り返すため、自分がかつて住んでいた都市部(シティ)へ向かう。道中、シティにいた時の事を思い出す。
自分の手元にも置いておきたかったけど、この本は図書館に置いてほしいと思い、リクエストして図書館に所蔵してもらうことになりました。
舞台は今よりも何十年か先の近未来。本は貴重なものとなり、授業でも生活の中でも電子書籍が主流となっている時代。そんな時代に時代錯誤ともいうべき本が大量に所蔵されている図書館。そこには特別探索司書のワルツさんという女性がいました。
ワルツさんの知識の幅広さも素晴らしいですが、何よりも本を誰よりも愛していることが伝わってきます。1ページ1ページ大事に読みたいと思わせてくれる作品でした。
後々分かることですが、著者はいつか本というもの自体が無くなってしまうのではないかという心配を抱える病気を持っているということでこの作品が生まれたそうです。
私も不安に思っていた時期がありました。今までも電子書籍が出てきてはいましたがそこまで浸透していなかったのでまだ大丈夫だと思っていたのですが。ここ数年で徐々に侵攻してきていますよね。だから本というものが無くなるんじゃないか、図書館という場所が必要なくなるんじゃないかと、そう思ってました。
でも、私は今はそうは思いません。電子が全てではありませんし、データだけが全てではないですよね。特に名久井さんというブックデザイナーの存在を知ってから本が出来るまでの数々の工程を知り、無くなるんじゃないか、じゃなくて無くしてはいけないと思うようになりました。
それに以前も書きましたが、私はパソコンで文字を打つと何度も確認しているのに誤植が出てしまうときがあります。それくらい、パソコン等の電子機器から発せられる文字って私の頭の印象に残らないんです。ちゃんと本を読んで紙に記されている文字を読み取っていくことで文字が頭に残る気がするんです。
そう思っている人はきっと私だけではないはず。それに、本を友人と面白かったと共有するのって楽しいんです。私は、その想いを失くしたくないと思います。
私はワルツさんの想いまで強いものは持っていないですが、ワルツさんの本を愛する気持ちは痛いくらいに伝わってきました。ワルツさんにはサエズリ図書館でずっと父親の遺した大好きな本たちに囲まれて、ずっと本を守ってもらいたいなと思います。
どの章もとても素敵なお話でした。今まで全く本を読んだことがなかったカミオさんが徐々に本が好きになっていく様子は読んでいて嬉しかったですし、コトウさんの本に対する想いも好きでした。モリヤさんは初めは嫌な印象でしたけど、祖父への愛情を感じました。
上手く言葉で表現が出来ないのがとても残念です。でも、紅玉さんが書かれたあとがきを読んで、私も同じ気持ちでいることに嬉しさを感じました。紅玉さんも図書館で働かれていたことがあるんですね。勝手に親近感を感じました。
1ということは、これからも続いていくんですよね。またワルツさんに会えること、サエズリ図書館に入館できるのを楽しみにしています。
〈講談社 2012.8〉H24.9.10読了
ホントに、本の好きな人にはぜひ読んでほしい物語でしたね!
ワルツさんの優しさと強さ、本に関わる人たちすべての思いが、とても素敵でした。
続巻がとても楽しみです。
おお、電子データより紙の方が入りやすいのは、私だけじゃなかったんですね〜(#^.^#)。