
著者:千早 茜
講談社(2012-07-12)
販売元:Amazon.co.jp
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互いのことに深く干渉しない。その暗黙のルールは気ままな私が作っているのではなく、佐藤さんの微笑みが作っている―。30過ぎの美里と、ひと回り歳上の恋人・佐藤さん、その息子で大学生のまりも君。緑に囲まれた家で“寄せ集めの家族”がいとなむ居心地いい暮らしは、佐藤さんの突然の失踪で破られる。それは14年前の、ある約束のためだった…。繋ぎとめるための言葉なんていらない。さみしさを共有できたら、それでいい。泉鏡花文学賞受賞作家が描く奇妙でいとしい「家族」のかたち。
千早さんの最新刊です。
美里と佐藤さんとまりも君。それぞれ3人の目線に分かれて描かれています。
3人とも幼いころに「家族」というものと上手くかかわっていかなかったからか、何かが欠落しているような無気力のような、それぞれ変わった人たちだなというのが最初の印象でした。
でも、佐藤さんが失踪したことでその関係性は変わっていきます。
まるで幼い少女のような短気で気分屋の美里。佐藤さんとの関係も家賃が浮くからくらいの感じで同棲をしていたような感じだったけど、佐藤さんと関わってきた時間を反芻して、佐藤さんがどういう存在だったか再認識するようになります。
美里は結構終盤まで嫌いでした。自分勝手でまりも君に当たり散らすし。本当に少女というか子供だなと。でも、佐藤さんがいなくなったことで、自分はどうしたいのか自力で考え、行動するようになります。
最後のシーンが凄くよかった。感情を思うままに吐き出した彼女はもう吹っ切れたんだなと思いました。
まりも君も辛い人生を歩んできていて、実際はとても出来た20歳にはとても見えない子。おっさんみたいなんて言われてます。彼女もできたけど、接することに戸惑っていることが文面だけで伝わってきます。こう言ったら喜ぶんじゃないか、良かった合っていたんだと彼女と関わるたびに思っていて何だか切なくなりました。
でも、佐藤さんがやっぱり一番重傷で。果穂子にずっと縛られていたんですね。美里が佐藤さんを救ったんだと思います。
最後は何だか人らしくなった気がして良い終わり方でした。
ただ、あの女の子はどうなったんだろうと思わなくもないけど・・・
〈講談社 2012.7〉H24.7.30読了
そうそう!佐藤さんの章に出てきた女の子はどうなったんでしょうね。ちょっと気になりますね…。