リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)
著者:上田 早夕里
早川書房(2011-12-08)
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海洋黙示録『華竜の宮』が大反響! 今もっとも注目されているSF作家による 初の本格SF短篇集『華竜の宮』の世界の片隅で空を飛ぶのを夢見た青年の信念を描いた表題作、18世紀の魔都ロンドンを描く書き下ろし中篇等4作。
「リリエンタールの末裔」高台の村に住む少年チャムは空を飛ぶことに憧れを抱いていた。彼はその夢を捨てきれず、資金を集めるために海上都市で働くことを決意する。
「マグネフィオ」社員旅行中のバスを落石事故が襲い、同期入社の和也と修介はそれぞれに重い後遺症を負った。和也は高次脳機能障害と診断される。修介はさらにひどく寝たきり状態となった。修介の妻であり、ひそかに和也が想いを寄せていた菜月からこん睡状態の修介の内面を視る装置を作りたいと頼まれる。
「ナイト・ブルーの記憶」海洋無人探査機のオペレータ・霧島恭吾の役目は海洋調査をしながら無人機の人工知能にベテランパイロットの判断や行動を学習させること。あるとき、彼の身に異変が起きる。異常に海のものの反応を自分の肌で感じるようになる。
「幻のクロノメーター」18世紀ロンドンにて航海用時計の開発に挑むジョン・ハリソンの元へ、彼の友人の娘であるエリーは住み込みで働くことになった。亡き父から時計の素晴らしさを聞いてきたエリーは自らも時計を作りたいと願うようになる。

「リリエンタールの末裔」が「華竜の宮」と絡んでいるということだったので先に「華竜の宮」を読んだのだけど、読まなくても全然支障がなかったです。舞台背景が分かるというくらいで、これだけ読んでも十分楽しめたなと思いました。
「華竜の宮」を読むときも思いましたが、これほど本格的なSFを私は読んだことがないので、入り込むことが出来るのかなという想いがあったのですが、それほど意気込むことがなくても十分楽しめる作品でした。
「リリエンタールの末裔」チャムが空を飛ぶという熱い想いに胸打たれました。ここまで自分の夢を実現するために遠回りになるかもしれないと思っても情熱を注げるというのは素晴らしいと思います。そして、そんなに命を懸けてもやり遂げたいことがあるというのが羨ましく感じます。チャムは良い人に出会えてよかったですね。とても長い時間がかかりましたけど、そしてこれからチャムに訪れる試練は更に大変なものになるかもしれませんけど、そのまま想いを貫いて行ってほしいなと思いました。
「マグネフィオ」和也、修介、菜月の関係も気になりましたし、内面を視るという部分も気になりました。和也の想いも真剣だったのだけど、2人の間に入ることは例え片方の存在が現代で消えてしまっても変わることがなかったですね。
「ナイト・ブルーの記憶」霧島恭吾という人物について第三者が語っていきます。海の生き物が感じたものを自分が肌で感じてしまうなんて、ちょっと怖いかも。それを「気持ちいい」という霧島は本当に海と結婚したようなものだったんだろうなと思う。
「幻のクロノメーター」この物語が1番長かったです。こちらもジョン・ハリソンと共に過ごした女性が彼について語ります。この方は実在の方なんですね〜。時計職人さんは本当に凄いと思います。あんなに緻密な仕事、おおざっぱな私には不可能です^^;でも、仕事の辛さや面白さをこの物語を読んで感じることが出来ました。そのなかにもSF要素がちゃんと入っていましたね。

〈早川書房 2011.12〉H24.6.23読了