ナミヤ雑貨店の奇蹟ナミヤ雑貨店の奇蹟
著者:東野 圭吾
角川書店(角川グループパブリッシング)(2012-03-28)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
夢をとるか、愛をとるか。現実をとるか、理想をとるか。人情をとるか、道理をとるか。家族をとるか、将来をとるか。野望をとるか、幸せをとるか。あらゆる悩みの相談に乗る、不思議な雑貨店。しかしその正体は…。物語が完結するとき、人知を超えた真実が明らかになる。
「第一章 回答は牛乳箱に」
敦也、翔太、幸平は泥棒に入り逃げ出した。盗んだ車が止まってしまい廃屋に隠れることに。誰も住まわなくなってしばらく経っているはずなのに、手紙が投函された。そこには悩みが書かれていた。差出人はオリンピック候補に挙がっている女性であり、余命宣告を受けている彼のもとにいるべきか悩んでいるという。
「第二章 夜更けにハーモニカを」
克郎は代々続いてきた「魚松」の跡を継ぐことを辞め、音楽の道へ進むことを決意する。しかし現実は厳しかった。そんな自分に自信がなくなってきていた時、父親が倒れたと連絡が入る。ますます跡を継ぐことを考える。そんな時、一人の女性がナミヤ雑貨店のポストに手紙を入れているのを見て自分も投函することにした。
「第三章 シビックで朝まで」
貴之は父親雄治が高齢となって来たため「ナミヤ雑貨店」を畳み、同居を勧めていた。しかし、雄治は首を縦に振らない。それはお店の事ではなく、お店に寄せられている相談事に対して未練があるようだった。
「第四章 黙祷はビートルズで」
両親の羽振りが良く、小学生の時は皆が持っていないステレオを持っていた浩介。しかし、だんだん家庭にお金が無くなっていくことに気づき、最後には夜逃げをするという。両親を信じられなくなった浩介は悩む。そこにナミヤ雑貨店が子供の悩みに応えてくれることを知り手紙を書くことにした。
「第五章 雲の上から祈りを」
過去から来る悩み相談の手紙の返事を書いてきた敦也、翔太、幸平は19歳の少女からの返事を待っていた。少女の事が気になり、未来の現在の事を伝えてしまったのは彼女も3人と同じく児童養護施設「丸光園」の出身だと分かったからだった。

ネタバレあります

こういうテイストの東野作品は珍しいですね。タイムスリップものだと「トキオ」を思い出しますが…。
こういう作品も良いですね。私はとても好きです。
最初は泥棒を働いてしまった少年(青年?)3人が登場して、一体どういう話なんだろうと思って読んでいたのですが。こういう展開でしたか。
そしてただ手紙が過去と現在を行き来しているだけでなく、全ての人や出来事に繋がりがあったんですね。
ナミヤ雑貨店と丸光園に関わった人がやたらと絡んでいる。それがどうしてなのかなとリンクを発見しつつ思っていたのですが、全てはおじいちゃん、波矢雄治と丸光園の元園長の結びつきだったんですね。
最後のタイトルが本当にふさわしい。雲の上から皆を見つめていたんですね。波矢さんも、園長さんも。
最後、あの3人が絶望しないで前向きになれて良かったです。
3人は相談に対して真摯に回答をしていました。それは波矢さんに通ずるものもあったのだと思います。悩みを相談するのはきっかけがあればできますが、その悩みにこたえるというのはなかなか難しいです。それができるんですから3人はきっと大丈夫。
未来は明るいと思います。
そして、ナミヤのおじいさんも素晴らしい方ですね。園長さんも。様々なことを経験されたから、たくさんの幸せを与えることのできる人になったのだと思います。
おじいさんはどこまで見越していたのだろう。33回忌の時にあの少年たちが来ることも気づいていたのでしょうか。

〈角川書店 2012.3〉H24.5.5読了