ホテル・ピーベリーホテル・ピーベリー
著者:近藤 史恵
双葉社(2011-11-16)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

不祥事で若くして教師の職を追われ、抜け殻のようになっていた木崎淳平は、友人のすすめでハワイ島にやってきた。宿泊先は友人と同じ「ホテル・ピーベリー」。なぜか“滞在できるのは一度きり。リピーターはなし”というルールがあるという。日本人がオーナーで、妻の和美が、実質仕切っているらしい。同じ便で来た若い女性も、先客の男性3人もみな、日本人の旅行者だった。ある日、キラウェア火山を見に行った後に発熱した淳平は、和美と接近する。世界の気候区のうち、存在しないのは2つだけというこの表情豊かな島で、まるで熱がいつまでも醒めないかのごとく、現実とも思えない事態が立て続けに起こる。特異すぎる非日常。愛情、苦しみ、喜び、嫉妬―人間味豊かな、活力ある感情を淳平はふたたび取り戻していくが…。著者渾身の傑作ミステリー。

近藤さんの作品は何が起こるんだろうと、事件が始まる前の段階が読んでいてドキドキします。伏線があるのに私はいつも全然気づかないしわかりません^^;
この作品の舞台はハワイ島で日本人が経営しているホテル。ピーベリー。
素敵なホテルなのだけど、ここに滞在できるのは一生に一度きり。期間は最長3か月。
主人公の木崎が訪れた時にはすでに日本人がいて、誰もが自分に対して干渉しない自由な雰囲気。それに木崎はほっとする。初めは木崎の過去は語られないのだけど、徐々に明らかになっていきます。
木崎が日本を離れたかった理由。木崎という人間と長い間関わっていくとノーマル?で危険性はないと分かるのだけど、日本でしたことは・・・う〜ん。しょうがないのかなというか、そう思われても仕方ないというか・・・。疾しいことを何も一切していないのならせめて6年待てばよかったんじゃないか?とも思うし、相手の本気度なんて信頼性が薄すぎるのは目に見えてるし・・・。やっぱり軽薄としか言えないかな。かわいそうだとは思うけど。
他の旅行者たちも何も語らない分、最初はなぜ長期旅行をしているのか、謎で怪しかったけど、桑島さんの気持ちは共感できる部分はあったかな。私も割と桑島さんと同じようなタイプ。綺麗な人ではないけど^^;そこじゃなくて。小中高大と大きな問題もなく割と「いい子」で育ってきた。そういう人を見る男性の目も何となくわかる。相手の言った「許す」という言葉。それが桑島さんに対する想いのすべてなんだと思いました。すべてが自分の思うようにしないと気が済まない。そしてそうしてくれると思ってるしそれが当たり前だと思っている人なんだろうなと思います。
あ〜あの上から目線はムカついた〜。
読んでいない人には意味不明な文章だと思いますが^^;私も、叱られても愚痴られても良いから毎回遠くででも迎えに来てくれる人が良いな。
ミステリ部分は結構終盤になるのですが、なるほど。と納得。だからリピーターは受け入れなかったんだなと思ったし、青柳は避けていたんだろうなと思う。
事件は何とかなるけど、あとは木崎の問題かな。最後の一文が好きです。たぶんこれからはちゃんと前を向けるようになるんだろうなと思ったので。
残念だったのは「夏への扉」が未読だったこと。読んでいれば心情の深い部分までちゃんと理解できただろうなと思ったらちょっと悔しいです。

〈双葉社 2011.11〉H23.12.19読了