本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)
著者:宮崎 駿
岩波書店(2011-10-21)
販売元:Amazon.co.jp
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「生まれてきてよかったんだ、と子どもにエールを送るのが児童文学」。自らの読書体験、挿絵の素晴らしさ、アニメと本との関わり、そして震災後の世界について──。アニメーション映画界のトップランナーとしてつねに発言を注目される著者が、お薦め岩波少年文庫50冊の紹介とともに、本への、子どもへの熱い思いを語る一冊。(カラー版)

宮崎さんが実際に少年時代に読まれてきた岩波少年文庫の物語の数々を丁寧に説明してくださっています。
私は現在、乱読型なので、丁寧にちゃんと理解して…と聞くとちょっと耳が痛いのですが。それでも、宮崎さんの児童文学に懸ける思いはとても伝わってきました。本当に物語を愛している方なんですよね。
いろんな情報が錯綜しているこの世の中で、子供たちが自ら本を、特に文字ばかりの本を手に取るという機会は減ってきているのだと思いますが、本を開いて物語を探求するという面白さを知ってほしいなと私も感じました。
――どんなに時代が暗くなっても、子供にはエールを送りたい、「生まれてきてよかったんだ」と。そんな本が一冊あればいい。たくさんの本を読む「必要」なんてない。
この言葉がとても印象的です。子供たちへの強いメッセージですよね。
また、3.11後の世界についても書かれていました。
かつて関東大震災が起き、転がり落ちていった戦前の日本経済と現状は似ていると話されています。経済の話ばかりしている今の日本が危険な状態を孕んでいるということも。
今はファンタジーは書くことが出来ない。でも、次を担う今の少年ファンタジーを書いてくれる。と宮崎さんは期待しています。
私も期待したいです。

〈岩波書店 2011.10〉H23.12.12読了