長い長い殺人 (光文社文庫プレミアム)長い長い殺人 (光文社文庫プレミアム)
著者:宮部 みゆき
光文社(2011-07-12)
販売元:Amazon.co.jp
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轢き逃げは、じつは惨殺事件だった。被害者は森元隆一。事情聴取を始めた刑事は、森元の妻・法子に不審を持つ。夫を轢いた人物はどうなったのか、一度もきこうとしないのだ。隆一には八千万円の生命保険がかけられていた。しかし、受取人の法子には完璧なアリバイが…。刑事の財布、探偵の財布、死者の財布―。“十の財布”が語る事件の裏に、やがて底知れぬ悪意の影が。

1992年に刊行された作品。文庫本が勤めている図書館に入ってきたので読んでみました。
タイトルから殺人事件なんだろうなと思い、あらすじは全く読まずに読み始めたのですが、まさかの財布目線。なんて斬新な。
ある連続?殺人にかかわる人たちの財布が事件について、また持ち主のことについてを解説してくれています。
始めはただの轢き逃げ事件だったのかと思いきや連続殺人に発展し、意外な展開へと進んでいきます。
とにかく容疑者らしき人たちが卑劣で酷過ぎます。人を人と思っていない。最後まで読んで、本当にただの目立ちたがり屋なんだろうなと思いました。
自分はお金も美貌も名誉も持っている。それをひけらかしたいだけなんだろうなと。
早苗が本当にかわいそうでした。運命の相手だと思って結婚したのに。
みんな、雅樹君のことを少しでも信じてあげていれば良かったのに。
こうしていればよかった。なんていくらでも言えるのだけど、やはりやり切れないだろうなと思います。
そしてこういう悲劇を生んでしまった影には、マスコミの囃し立てというのも関係しているんだろうなと思います。
それは現代でも言えることだけど、マスコミの影響力は良くも悪くも大きい。
それを存分に利用した作品なんだろうなと思いました。
読んでいて塚田の正体に気付いた時、私は「模倣犯」のピースを思い出しました。
こうして作品は繋がっていくんですね。
私の財布は私と一緒にいて幸せだと思ってくれているかな。それとも、ちゃんと使ってよ!って怒っているかな。私が社会人になるときに弟がお祝いに買ってくれたちょっと高めの財布。5年使っていてボロボロになりかけているけど、代える予定はないし、この作品を読んでさらに代えられなくなってしまった。

〈光文社〉H23.12.10読了