
著者:初野 晴
ポプラ社(2011-10-15)
販売元:Amazon.co.jp
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世界が終わっても、ずっと一緒にいるよ。
終末論が囁かれる荒廃した世界で、孤独な女性のもとに現れたのは、言葉を話す不思議な赤毛のサルだった――。
ひとつ屋根の下、奇妙で幸せな一人と一匹の“ふたり暮らし”がはじまる。
一日一杯のミルクをわけあい、収穫を待ちわびながらリンゴの木を育て、映画を観る約束をする――。しかし、隠された彼の“秘密”が明かされるとき、物語は終わりとはじまりを迎える……。
赤毛のサルの正体は?そして彼が現れた目的とは?
壊れかけた世界で見える、本当に大切なもの――不条理で切ない絆を描き出す寓話ミステリー。
ハルチカシリーズ以外の初野さんの作品を読むのは久しぶりな気がします。
あの作品はラブコメ?^^;というか明るい作品ですけど、基本初野さんの作品は私は暗いと思っているので、そうそう、こういう感じなんて思いながら読んでました^^;
舞台は現代よりも少し先の未来。
1年後には世界が滅びるといわれている世界でたった一人で生きていた静。
介護ロボットが当選し、来たと思ったらいたのは赤毛の猿。しかも人の言葉を話せる。
一体この猿の正体はなんなのか。不思議なふたりの生活が始まります。
始めはノーマジーンの出来の悪さに読んでいてイラッとしたこともあったのだけど、静を想う気持ちと一生懸命さはとても伝わってきました。切ないくらいに。
そもそも静の出生や境遇についても始めは分からず、読んでいくとそれも分かっていくのですが、本当に人間の汚い部分が凄く見えました。残酷すぎます。静は何も悪くないのに。
それでも、この作品の中で登場した〈見えたひと〉〈見えないひと〉〈見てみぬふりをするひと〉〈見間違えたひと〉〈見えたふりをするひと〉というのは私もどこかしらに該当するのだと思うけど…。
ノーマジーンの境遇は静にとっては残酷で、真実を知ってから心に薄い膜を貼ってしまったというけれど、ノーマジーンは真実を何も知らない。
静は何も悪くないのに静が悪いような対応をしてきた施設の人間、周りの人間、静を助けなかった人間よりもノーマジーンは静に寄り添っている。
だから、最後は本当にほんの少しだけ報われたような気がしました。
〈ポプラ社 2011.10〉H23.11.3読了
だから、ラストは私もすごく救われた気持ちになりました。シズカの本音が聞けて良かった。この世の終わりが来る瞬間まで、二人には一緒にいて欲しいなって思いました。