異国のおじさんを伴う異国のおじさんを伴う
著者:森 絵都
文藝春秋(2011-10)
販売元:Amazon.co.jp
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「藤巻さんの道」
道だけが載っている写真集がある。女性は何故か1番好きな道を選ぶ。僕は仕事のパートナーである藤巻さんにも聞いてみた。仕事が出来、しっかりしている藤巻さんだが、選んだ道は1番殺伐とした道だった。
「夜の空隅を埋める」
私の住むマンションでは最近何故か私のところとミセス・グハーのところだけ停電になる。2人は抗議しようと原因らしい電気工事をしている人達を探す。
「クリスマスイヴを三日後に控えた日曜の…」
クリスマスイヴに会社の同僚に食事に誘われたため、イヴ3日前にデパートへ赴いた。失敗したと思いながら歩いていると、靴屋で靴を選んでいる老婦人を見かける。
「クジラ見」
新婚旅行で沖縄に来ていた一組の夫婦。新妻がホエールウオッチングに行きたいという。クジラの群れを見ることが出来ると言う。
「竜宮」
中塚はフリーライターである。ライター歴は長いが未だにレコーダー起こしをしている。それは、若かりし頃に起こさなかったためにしてしまった失敗を引きずっているからだった。
「思い出ぴろり」
私はかつて一人旅をした修善寺の町にたたずんでいた。その時葬儀屋の名前の入ったバスに乗った男性が私に話しかけてくる。
「ラストシーン」
僕は40Aの女性と40Cの男性に挟まれて飛行機に乗っていた。40Cの男性がいきなり叫びだす。映画を見ていてラスト10分で着陸態勢のために画面が消えたからだ。
「桂川里香子、危機一髪」
新幹線で同乗した桂川先生は新幹線だけ苦手だと言う。その理由を話し始めた。桂川先生は名家に生まれ、妙齢になり仕事を取るか結婚を取るか迫られる。しかし彼女は自由をとった。その中でエジプト人の男性と出会い結婚を誓い合う。家族に挨拶に行こうと新幹線に乗ろうとしたとき、彼女の彼の間で事件は起きた。
「母の北上」
実家の母親が、父親が亡くなってから家で過ごすスペースが徐々に北上していることに気づいた。今は1番北にある物置で生活している。母は父との思い出のあるこの家に住みたくないのか、長男である自分は悩む。
「異国のおじさんを伴う」
私は昔から気になりだすととことん気になる体質だった。海外の人形が気になり、その人形がテーマの本「ビアード・マン」シリーズを作ったのもそれがきっかけだった。そのシリーズを地元の方々が気に入って会を立ち上げているのだと言う。

森さんの新刊。短編集です。
それぞれ本当に短い作品ばかり。でもオチが割りと面白くて好きでした。
シュールなのも割りとありましたね^^;
「藤巻さんの道」
意外な展開で驚きました。てっきり藤巻さんの心の中には深い過去の闇があるのかと思ったのですが、もっと身近で割りと深刻な問題でしたね^^;最後の台詞が私は好きでした。
「夜の空隅を埋める」
この作品のオチも面白かったです。
「クリスマスイヴを三日後に控えた日曜の…」
同じく主人公同様に最後の台詞にやられました。何だか心があったかくなりました。
「クジラ見」
旦那の性格の悪さに辟易していたのですが^^;本当に結婚するの?でも奥さんの尻に敷かれそうな気がしますね。
「竜宮」
すっごく切なかったです。レコーダー起こしは面倒だけど取材した相手の気持ちを汲み取るって大事だと思います。時間に追われて起こさないからつじつまが合わない記事が増えてるんですかね。
「思い出ぴろり」
最後のオチにビックリ。まさかそんな人だったとは!葬儀屋さんだからなんでしょうか。
「ラストシーン」
これも面白かったなぁ。くだらないっちゃくだらないのだけど^^;本人にとっては切実な問題ですよね。「検察側の証人」が見たくなりました。
「桂川里香子、危機一髪」
これもくだらなくて面白かった^^でも、最後はせいせいしました。私も読んでいてイラッとしたから。
「母の北上」
お母さんが北上する理由がビックリ^^;まさかそんな理由とは。でも、負けず嫌いで素敵なお母さんなんだろうなと思う。ケンさんが気になる^m^
「異国のおじさんを伴う」
表題作だけど1番よく分からなかったです^^;あ・・・そうって言う感じでした。すみません。

〈文芸春秋 2011.10〉H23.10.31読了