真夜中のパン屋さん (ポプラ文庫)真夜中のパン屋さん (ポプラ文庫)
著者:大沼紀子
ポプラ社(2011-06-03)
販売元:Amazon.co.jp
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都会の片隅に、真夜中にだけオープンする不思議なパン屋さんがあった。あたたかい食卓がなくても、パンは誰にでも平等に美味しい。心地良い居場所を見つける物語。
謎多き笑顔のオーナー・暮林と、口の悪いイケメンパン職人・弘基が働くこの店には、パンの香りに誘われて、なぜか珍客ばかりが訪れる……。
夜の街を徘徊する小学生、ワケありなオカマ、ひきこもりの脚本家。
夜な夜な都会のはぐれ者たちが集まり、次々と困った事件を巻き起こすのだった。 家庭の事情により親元を離れ、「ブランジェリークレバヤシ」の2階に居候することになった女子高生・希実は、“焼きたてパン万引き事件”に端を発した失踪騒動へと巻き込まれていく…。
期待の新鋭が描く、ほろ苦さと甘酸っぱさに心が満ちる物語。

大沼さんの作品が好きで、多分出ている本は全部読んでます。といっても、この本で3冊目だと思いますが^^;
大沼さんの新刊が出てる!予約しなきゃ!と思い予約。
私は3番目だったのですが、待っている間にどんどん予約が膨れ上がり凄い件数に。
言ったら失礼ですが、そこまで知られている人気作家さんだったか・・・?と思ったのですが。ブランチかなにかで紹介されたらしいですね。
大沼さんの作品っていつもどこか家族の形が特殊なんです。
子どももとても変わっている子が多い。でも、悪いわけではなくて大人になりすぎているんですよね。でももちろん子どもの部分もあるから、人と関わって行く中で葛藤があって。今回も出てくる人達の様々な葛藤が見えました。
暮林も弘基も希実もこだまも織絵もソフィアも斑目もみんな何かしらの闇を抱えているのだけど、それでもいろんな形で人を思いやっていて。それが切ないくらいに素敵なんです。
みんな不器用なのだけど、人のことをすごくよく考えている。思いやってる。
何だか自分がなんてちいさな人間なんだろうって思うくらいに。
希実のことに関しても、いきなり奥さんと異母姉妹らしいので置いてくださいって言ってる言わば赤の他人を何の疑いもせずに住まわせる暮林も弘基も最初は何で?と違和感が物凄くあったのだけど。それでも全部読み終えてからそれが少し理解できた気がします。
最後もとても好きです。みんなが集まっている姿を想像すると、とても幸せな映像が思い浮かぶんです。これからも様々な問題が生じるのかもしれないけど、それでもこの人達なら自分のことはそっちのけで何とかしようとするんだろうなという気もします。
やっぱり大沼さんの作品は素敵です。これからもずっとずっと追いかけていきたいと思います^^

〈ポプラ社 2011.6〉H23.9.22読了