
著者:佐藤 青南
宝島社(2011-05-06)
販売元:Amazon.co.jp
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「亜紀ちゃんの話を、聞かせてください」10年前に起きた、少女をめぐる忌わしい事件。児童相談所の元所長や小学校教師、小児科医、家族らの証言を集める男の正体とは…。哀しくも恐ろしい結末が待ち受ける!2011年『このミス』大賞優秀賞受賞作。
全て語り形式で進んでいきます。誰がインタビュアーなのか、始めは分かりません。
でも、亜紀という少女の10年前の事件についてをインタビューに答える人が語っていきます。
長峰亜紀という少女は、母親の交際相手から激しい虐待を受けており、同級生や児童相談所、小児科医などが総出で助けようとします。
どの人も言うのは亜紀という子は年の割にはしっかりしているとても可愛らしい女の子だと言うこと。そして、杉本という母親の相手が脅威だったことを語っています。
読んでいてすっかりだまされました。
そういえば少女を「めぐる」忌まわしい事件だとあらすじにもタイトルにも書いてあったんでした。
始めから読む手が止まらず、中盤で「え?どういうこと?」という状況になり、一気に最後まで読みたくなるというすっかり作者の手中にはまっていました。
そして最後の最後。まさしく「悲しくも恐ろしい結末」だと思いました。
インタビュアーの正体は最後の最後に判明し、そして頷けます。
どうりで、話をしてくれる人がいともスムーズに話をしてくれるなと思ったし、正体が分かった途端相手がなんだか態度が柔らかくなったような気がしたんです。
虐待に関しては本当に今の日本の世相を現していますよね。
亜紀の母親も、杉本も杉本の母親もおかしいです。全ては自分がかわいくて、自分の身を守りたかったんだと思います。そして、愛情のかけ方を間違ったんだと思います。
だから、負の連鎖は続き、次々と本当は幸せを掴めるはずだった人たちが巻き込まれ、不幸になっていったのだと思います。
亜紀を信じていた人たちが本当に可哀相です。でも、きっと何度も大人に裏切られた亜紀はそんなことを露ほども感じていなかったのだと思います。
児童相談所の所長が最後に下した判断は私は間違っていたと思います。
間違っていたから、被害者に被害者を重ねる結果になったのだと思います。
読んでいて怖かったです。
人との関わりが怖くなりました。人を信じることが怖くなりました。
そこまで思わせるこの作家さんは凄いと思います。
またインパクトのあるタイトルで著作が出たら、目を背けたくなりつつも読んでしまうような気がします。
〈宝島社 2011.5〉H23.8.10読了
嫌な人間ばかり出て来るし、児童虐待の描写を読むのもキツかったので、読んでいて度々気が滅入りましたが、のめり込んで読ませるリーダビリティは新人離れしていて素晴らしかったです。第二作も注目したいですね。