三つの名を持つ犬三つの名を持つ犬
著者:近藤史恵
徳間書店(2011-05-17)
販売元:Amazon.co.jp
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愛犬エルとの生活を綴ったブログがきっかけに、ようやく仕事が入り始めたモデルの草間都。彼女にとって、エルとの絆はあらゆる意味で人生の救いだった。だがある夜、デートから帰るとエルは死んでいた。犬嫌いの男と会っていたばかりに……。自分を責める都。エルの死は、モデルの仕事の危機も意味していた。追い込まれた都の前に、エルそっくりの犬が現れる。犬を愛するひとなら号泣必死のサスペンス。

ネタバレあります

久しぶりに近藤さんのサスペンスもの?を読んだ気がします。暗めと言いますか^^;
始めのあまりにも怒涛な展開に「え〜!」と思いついていけなくなりつつも読む手は止まらずあっという間に読んでしまいました。
愛犬家は必読かどうかは分からないけど、犬を飼っていない人でも十分楽しめた作品でした。でも、泣きはしなかったな。愛犬家は泣くのだろうか、どうだろう。
都が恋人と会っていたがためにエルが亡くなってしまい、モデルとしての仕事がなくエルありきの生活をしていた事で混乱したのは分かります。
そこでそっくりの犬をホームレスの男が飼っているのを見つけ、つい誘拐してしまうと言うのも、必死の状態だと分かる気がするんです。
でも、その後の修羅場というか何というか・・・。いや〜サスペンスですねぇ。
そもそも都は、どうしてこんな男と付き合っていたのだろう。妻子持ちの男でも、魅力的ならまあそういう関係になってしまっても仕方がないのか。とは思うけど(私はしませんよ!容認もしてませんよ!)にしては橋本と言う人物に魅力はあるのかと言えば私は全く感じなかった。何だか女遊びをもの凄くしてそうだし、簡単に「俺と犬とどっちが大事なんだよ」なんていう愚問を簡単に言うし、相手の弱みに平気でつけこむし・・・。あぁ、何だかイライラしてきた。何だかキレたあとの橋本の言葉が「てめぇが言うな!」とぶん殴りたくなりました。奥さんのした行動も分からなくもなかったりして。愛想着かしてたんだろうなぁ。
と言う事で最初の展開はポカンとしてしまったところもあったのだけど、都の犯した罪についてを嗅ぎ付けた輩がどう行動するのか、都はどうなるのか、江口との関係は?といろんな部分が気になってドキドキしました。
江口は始めから割りと好感を持っていたのですが、都と出会った事で自分の若気の至りを反省して前を向ける事ができてよかったと思います。奈落の生活から自力で抜け出したと思うし。
最後の都の選択は私は正しかったと思います。どんな形であれ罪は罪だから。
でも、都にはちゃんと待っていてくれる人がいるのだから、幸福ですよね。

〈徳間書店 2011.5〉H23.5.31読了