シューマンの指 (100周年書き下ろし)シューマンの指 (100周年書き下ろし)
著者:奥泉 光
講談社(2010-07-23)
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シューマンの音楽は、甘美で、鮮烈で、豊かで、そして、血なまぐさい――。
シューマンに憑かれた天才美少年ピアニスト、永嶺修人。彼に焦がれる音大受験生の「わたし」。卒業式の夜、彼らが通う高校で女子生徒が殺害された。現場に居合わせた修人はその後、ピアニストとして致命的な怪我を指に負い、事件は未解決のまま30余年の年月が流れる。そんなある日「わたし」の元に、修人が外国でシューマンを弾いていたいう「ありえない」噂が伝わる。修人の指にいったいなにが起きたのか――。
野間文学賞受賞後初の鮮やかな手さばきで奏でる書き下ろし長編小説。

以前本屋大賞ノミネート作が発表された時に、大賞が決まる前には読めると思うと言っていたこの作品。・・・それまでに回ってきませんでした^^;
まあ、賞は関係なく気になっていた作品だったのでようやく回ってきて読めてよかったです。
冒頭は30年近く前に届いていた手紙から物語は始まります。
語り手である里橋優宛に友人の鹿内堅一郎から届いた手紙。
そこには、かつて事故で指を切断したピアニストの指が復活していたというもの。
もう冒頭から心を鷲掴みにされて読む手が止まりませんでした。
でも、てっきりその指に関わる物語なのかと思ったら、語り手と永嶺との出会いから事故、その後など時代を振り返るような描写が多かったので、ちょっとだけ拍子抜けしてしまいました。
そして私が習っているのはピアノではなくエレクトーン。クラシックも弾かなくはないですが知識はなく、シューマンの良さが前面に出ている作品なのにほとんど理解できていないのがもったいないなぁと思いました。
語り手の歩みと、終盤に訪れる事故と、一つの殺人事件。
ホント、ミステリだったんですね^^;想像していた物語と違いました。
面白かったんですけど、最後の最後に語り手が変わった部分では混乱しました。
今まで読んでいたのは何だったんだ?と思わなくもなく。
納得が行くようないかないような感じです・・・
でも、決して悪いわけではないんです。
ストーリーはとても面白かったし、最後の語り手が変わる部分もなるほどなと思いましたし。
奥泉さんって結構前から名前は拝見していたのですが、分厚い本が多いし、ストーリーも難しそうな気がして読んだ事がなかったんです。今回読めてよかったです。それが1番大きいかも。

〈講談社 2010.7〉H23.5.5読了