伏 贋作・里見八犬伝伏 贋作・里見八犬伝
著者:桜庭 一樹
文藝春秋(2010-11-26)
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オススメ!
時は江戸時代。
伏と呼ばれる若者による凶悪事件が頻発し、その首に幕府は懸賞金をかけた。
伏とは──人にして犬、体も心も獣のよう。ひどく残酷な面があり人々から恐れられる一方で、犬の血なのか驚くほど人懐っこいところもあるという。
ちっちゃな女の子だが腕利きの猟師、浜路は浪人の兄に誘われ、伏を狩りに山から江戸へやってきた。獣の臭いに敏感な浜路はすぐさま伏に気づき追いつめる。
そんな浜路のまわりをうろつく瓦版の読売、冥土から、浜路は伏にまつわる世にも不思議な物語を聞く。そして冥土に誘われた場所で、一匹の伏をみつけた浜路。追いかけるうちに、伏とともに江戸の秘密の地下道へと落っこちる。真っ暗闇の中で、狩るものと狩られるものによる特別なひとときがおとずれた――。

長かった。ページも長いけど、何巻も続く長い長いお話を読んでいるような感覚でした。
ちょうどおとといの「王様のブランチ」でこの作品が特集されていて、とにかく大絶賛だったので、もう楽しみでしょうがなかったです。
評論家?のおっしゃるとおり、数百年と続く伏の歴史が一気に読める壮大なお話。
この書き方が本当に上手いと思いました。
桜庭さんが歴史小説!?と思ったのですが、桜庭さん自身が時代小説が読みにくいと思っていて、自分が分からない言葉は分かる言葉に直したり意識していたようでとても読みやすかったです。
時代小説としてもとても面白かった。
犬人間が生まれた始まりの話が書かれている「贋作・里見八犬伝」と因果の果、終わりの部分が書かれた信乃の物語。
どちらも数奇な悲しい運命が描かれていました。でも、それよりも前に里見がしたことが犬人間の歴史の発端になっているんですよね。
そう考えると、悪いのは里見義実なのだろうか。歴史の始まりは簡単にはいえないですよね。
「贋作・里見八犬伝」の伏姫の境遇が本当に切なくて。どうして伏姫だけこんなに辛い人生を送らなければならなかったんだろう。あれだけ憎み合っていた姉弟が今生の別れとなるときの会話が本当に切なくて悲しかった。弟が、犬を拾ってきた自分が悪いと女装をして自ら身代わりになろうとしたところには愛を感じました。
浜路と道節がまたいい味を出していました。
生まれ持った猟師の血から伏の獣の臭いを感じ、追いかける浜路。
その天性のものというか生まれ持ったものというか。浜路はかつて伏と因縁があった誰かの生まれ変わりなのかなとか思ってしまいました。
でも、最後にお兄ちゃんを頼って子どものように泣いているシーンを見ると、まだ若い少女なのかなという感じもしてそこも愛らしかったです。
私は「南総里見八犬伝」を読んだ事がないので、どこが同じでどこが違うのかは分からないので、先に読んでいればもっと楽しめたのになと思いました。
でも、読んでいなくても本当に面白かった!
何だかもう映画化計画が進行しているようで・・・
それは嫌だなぁ~・・・

〈文藝春秋 2010.11〉H23.1.10読了