寝ても覚めても寝ても覚めても
著者:柴崎 友香
販売元:河出書房新社
発売日:2010-09-17
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人は、人のどこに恋をするんだろう?消えた恋人・麦を忘れられない朝子。ある日、麦に顔がそっくりな人が現れて、彼女は恋に落ちるが…朝子22歳から31歳までの“10年の恋”を描く各紙誌絶賛の話題作。

ネタバレあります

柴崎さんの作品では珍しく、10年と言う歳月を書いた重みのある作品だったかなと思います。いつもの作品は割りと日常のことがありつつ恋愛のことも書かれていると言う感じなので。
朝子のこと、はじめは嫌いじゃなかったです。カメラが趣味だからか、日常の何気ない事を気にかけているのがいいなと思ったし、恋人をこの人だ!と思ったら割とそれで突っ切っちゃうところも嫌いじゃなかった。
でも、最後の行動はいろいろいただけないです。
麦の元へ行くなら行って突っ切って欲しかったし、亮平を選ぶなら亮平だけを見ていて欲しかった。
じゃないと、麦も亮平も可哀相です。
まあ、ああしなければ自分の気持ちの整理がつかなかったのかもしれないけど。
というか、もともとは麦が悪いんですよ。なんですか、あの放浪癖は。
それでずっと会わなければいいのに、10年経って何気なく登場するのもどうなんですか!
それまで朝子がどんな気持ちで待っていたのかとか、結婚しているかもとか他に彼氏がいるとかそういうことは全く思わなかったのでしょうか。
もうもう、言いたい事は山積みです。
でも、1番かわいそうなのは亮平です。
きっと、朝子は自分に似ている別な人を想っているんだと気付いていたはずです。それでも朝子を愛して、付き合ってた。なのにあんな事をされたら、傷つくし、顔も見たくないだろうし忘れたいと思うはず。
なのに、最後の朝子の行動。
あれは酷ですよ。「俺はお前を信用していない」当然だと思います。
でも、彼はきっと優しいから、長い年月をかけて許すんだろうなとも思うのですが。
言い方があまり良くないかもしれませんが、柴崎さんの作品を読み終えて、これ程悶々としていろいろ考えたのは初めてです。
でも、嫌いな作品ではないんです。柴崎さんっぽさはもちろんありましたし。
人の残酷な部分とわがままな部分を見せつけられた作品でした。

〈河出書房新社 2010.9〉H22.9.30読了