鳩とクラウジウスの原理
鳩とクラウジウスの原理
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恋愛に縁のない貧乏青年・磯野のアパートに学生時代の仲間が転がりこんできた。磯野の新しい職場は「鳩航空事業団」。そこでは鳩が恋文を運ぶ伝書鳩サービスを提供している。ある日、伝書鳩が「クラウジウス団」なる連中に拉致されてしまう。彼らの目的は「この世のあらゆる恋愛を妨害すること」。磯野は無事に鳩を相手に届けられるのか?かくして鳩を巡るナンセンスな闘いが幕を上げた。第1回野性時代フロンティア文学賞受賞作。

タイトルに惹かれて手に取ったのですが、受賞作品で初作品だったんですね。
文章は読みやすかったですし、ストーリーも面白かったです。
いきなり突飛な内容になったり、ロンメルや犬さんが面白かったり、個性的な部分が多く見えました。
主人公の磯野が1番まともだったかも。一応広告会社にちゃんと勤めていて、自活していて。
磯野の淡い思い出やロンメルの恋心とか、犬さんの天然さとか、読んでいて面白かったです。
でも、ページ数はあまり長くないのに読み進むのが遅かったんです。
ぐいぐい読めるって言うわけではなかったみたいで。
そう思っていたら、書評で山本文緒さんが「先へ先へと読者が引っ張られるという造りではない」というコメントを残されていて、申し訳ないんですが納得してしまいました。
でも、良かったです。
3人ともそれぞれ想いがあって、青春だなぁと思いましたし、ラストの磯野の想いが好きです。

〈角川書店 2010.4〉H22.7.12読了