MAMA (電撃文庫)
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海沿いの王国ガーダルシア。トトと呼ばれる少女は、確かな魔力を持つ魔術師の血筋サルバドールに生まれた。しかし、生まれつき魔術の才には恵まれなかった。
ある日トトは、神殿の書庫の奥に迷い込んだ。
扉の奥から呼ばれているようなそんな気がしたから。
果たしてそこには、数百年前に封印されたという人喰いの魔物が眠っていた。
トトは魔物の誘いにのった。魔物はその封印から解き放たれ、トトは片耳を失った。
そして強い魔力を手に入れた―。
これは、孤独な人喰いの魔物と、彼のママになろうとした少女の、儚くも愛しい歪んだ愛の物語。
第13回電撃小説大賞“大賞”受賞『ミミズクと夜の王』の紅玉いづきが贈る、二つ目の“人喰い物語”。
「ミミズクと夜の王」が大好きで、大好きすぎて他の作品になかなか手を出せないでいました。
ようやく、2作目を読みました。面白かったです。読む手が止まらなかったです。
サルバドールの落ちこぼれと言われ、家から追い出されるのではないかと怯えていたトト。トトが見つけた人喰いの魔物。彼に名前をつけたことで、トトは使い魔を持った。強力な魔力を手に入れても、トトは使い魔を従えている事で人からは避けられ、両親も近づかない。
トトには使い魔だけ。
その孤独さが、とても伝わってきて、痛々しくて、切なかった。
でも、トトは1人じゃなかったですね。
ティーランは始めは酷いお嬢様だと思ったけど、毒舌を振りまいている中にも優しさがあって、ゼクンは命を懸けてトトを守ってくれた。
だんだん人の温かさが見えてきて、何だか感動してしまいました。
最後は、切なくも素敵なラストでよかったと思います。
ただ、気になったのは使い魔であるホーイチについて、始めの印象とトトと一緒にいる印象がだいぶ違ったんです。
ホーイチの性格に一貫性がないと言うか。といったら失礼ですが。
そして、文庫化により書かれた書下ろし。「AND」。
これをかかれたことで、全てが一つになったんですね。
そのまとめ方が素晴らしいと思いました。少年のような風貌の人喰いが生まれた理由に、なるほどと思いましたし。
アベルダインも、お母さんも、きっと満足していると思う。
あとがきも面白かったです。以前の作品のあとがきを読んでも思いましたが、紅玉さんは、素敵な友人がいるんですね。思ったことをしっかり言ってくれる友達がいるから、こんな素敵な小説を書かれるんだろうなと思いました。
って、偉そうに。
他の作品も読むぞー。
〈電撃文庫 2008.2〉H22.6.24読了
MAMAも悪くはなかったですけど、いづきさんの作品の中では「ミミズク」が一番好きです。
なんとなく昔、ジャンプで連載されていた『脳噛ネウロ』という漫画を連想させます。