薔薇を拒む
クチコミを見る
施設で育った内気な少年・博人は、進学への援助を得るため、同い年の樋野と陸の孤島にある屋敷で働き始めた。整った容姿の樋野には壮絶な過去が。博人は令嬢の小夜に恋心を抱くが、陰惨な事件で穏やかだった生活は一変する。それは悪意が渦巻く屋敷で始まる、悲劇の序章に過ぎなかった――。
ネタバレあります
うわー!うわー!怖い怖い。最後がぞぞっとしましたよ、怖いですよ〜。
といっても、ホラーではありません。
人の悪な怖い部分が存分に出ているなと思ったんです。
冒頭から、イタイ話なんだろうなと思いました。近藤さんの作品でこういう感じ、久しぶりに読みました。
見ず知らずの男2人、博人と樋野がなぜこの家に呼ばれたのか。
3年間ここで働き、大検を取得すれば4年間の学費と生活費を援助するなんて、何か企みがあるとしか思えない。
その理由が分かった時、やっぱり人としてすら見てもらえていなかったんだなと思って、悲しくなった。所詮は金持ちの考える事だなとも。娘をも利用するなんて。どこか狂った家族でした。
でも、それを利用して、博人の行く末は良かったのかと思いますが、小夜に関しては怖くて怖くて。
見ているだけで良いと言っていたのに。あの屋敷に住んで、博人もどこかが壊れてしまったのかもしれないですね。
小夜も、本当に樋野のことを好きだったんだろうか・・・。どこか演技じみているような気がする・・・。
博人も、あんな結末なら一生どこかしらに後悔の念を持って生きるしかないじゃないですか。それは、決意の上なのかもしれないけど。
でも、1番かわいそうなのは、樋野のような気がします。
〈講談社 2010.5〉H22.6.18読了
博人の不安や違和感が伝わってくる反面、クールな文章だなと思ったんですよ。
今思うと薫が一番人間らしかったのかも。
ホラーではないのにゾッとするようなお話でしたね。
そういえば近藤さんってこういうのをさらっと書いてしまう作家さんでしたね。