真綿荘の住人たち
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「青少年のための手引き」
大和葉介は大学に合格し、東京へいくことになった。母の計らいで、下宿先が決まり、真綿荘にやってくる。そこには、大家の綿貫さん、綺麗な女性の椿さん、女子大生の鯨井さん、そして、綿貫の内縁の夫という真島晴雨がいた。
「清潔な視線」
椿は八重子と言う高校生と付き合っている。八重子に、ダブルデートをしてくれないかと誘われる。
「シスター」
鯨ちゃんは同じ下宿の大和君を好きになっていた。でも、大和君は大学で知り合った女の子の話しかしてくれない。同じサークルの荒野先輩が鯨ちゃんのことを気にかけていた。
「海へむかう魚たち」
大和君は絵麻という先輩の事が気になっていた。彼女は、OBの原田のことが好きらしいのだが。大和君は絵麻に振り回され、駆け落ちしようかと誘われる。
「押入れの傍観者」
男性が、一人旅でやってきた大学生に向かって、自分の顔の大きな傷が出来た過去について話し出す。
「真綿荘の恋人」
綿貫さんは出版社の須磨さんが自分に好意を寄せてくれている事に気付いていた。晴雨との関係について、改めて考え始める。
真綿荘に住む人々のそれぞれの想いを綴った作品です。
島本さん、文章がとても上手くなった気がする・・・とか言ったら失礼ですね、すみません。私なんかが。
でも、そう思ったのです。文章の言い回しや文体がとても読みやすくて引き込まれるなぁと思って。とても面白かったです。
中でも好きだったのは、鯨ちゃんの話。ぽっちゃりしていて自分に自信がない鯨ちゃんだけど、とっても気遣いが出来るし、いまどき珍しい可愛い女の子。
自分に恋愛は無縁だと思っているけど、凄く近くで好きになってくれている事に気づかず、自分も好きな人がいる。
特殊な人たちが多い中、鯨ちゃんの恋愛や生活が1番リアルに感じたから。
自分を好きでいてくれる人と付き合うけど、何だか同情で付き合ってないかなとちょっと心配になった。それは、ないとは思うけど。
椿さんと八重子ちゃんの恋愛も、可愛くて素敵だと思いました。
自分の弱さを曝け出す事が出来るって、大切で大事な事だと思いますし。
でも、大和君は嫌いです。
道産子だからおおらかみたいな感じで出てましたけど、後先考えずにあんなにストレートに自分が思った事を吐き出す人は嫌いです。何だかバカ丸出しな感じで。鯨ちゃんに対する言動が、悪気がない分タチが悪かったです
まあ、駆け落ちした事で大和君も成長したようですし、長い目で見てあげますけど(何様?)
ただ、綿貫さんと晴雨さんの関係は最後まで分からなかったです。
出会いも唐突で、17年もの間どうして晴雨さんを側にいさせているのかも分からないし、2人は好き合っているのかも分からなかった。
最後は2人の今後にとっては良かったのかなと思うけど、きっと誰もが「そっちか〜い!」って思ったはず^^;
でも、物語は本当に好きでした。新刊もあと少しで来ると思うので、楽しみです。
〈文芸春秋 2010.2〉H22.6.10読了
最後にはそれぞれが少しずつ前に進んだラスト、よかったですね。
鯨ちゃん、かわいかったですよね。
先輩とうまくいって欲しいなって思います。