道徳という名の少年
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「1,2,3,悠久!」町一番の美女が父なし子を産んだ。誰が父親なのか、町の人間は調べようとするが、分からない。美女が産んだ4人の子供は母親である美女の生き写しで、父親の面影はなかった。あるとき、美女は黄色い目をした痩せこけた旅の商人と恋に落ち、町を出て行ってしまった。4人の子ども達は娼婦となり、自分達の力で生きていく。ある日、母親である美女は突然帰ってきた。商人との子供である黄色い目をした息子を連れて。
「ジャングリン・パパの愛撫の手」雑貨屋の娘は向かいに住む家の父親の腕が好きだった。撫でられたり、父親の腕に触るのが好きだった。息子の道徳(ジャングリン)は娘の事が大好きだった。しかし、大きな戦争が始まり、ジャングリンは戦地へ行かなければならなくなる。
「プラスチックの恋人」ジャングリーナは小さな町に父と2人で暮らしていたが、あることをきっかけに都会へと赴いた。そこで歌を歌い、脚光を浴びるようになる。
「ぼくの代わりに歌ってくれ」ジャンは兵士として徴収され、戦地へいた。彼の父親は有名な歌手だったが、ジャンが16歳になる頃にはぶくぶくと膨れ上がり、たっていられない状態だった。ジャンは死ぬ事は怖くなかったが、いつも書いていたラブ・レターのことだけが気になっていた。
「地球で最後の日」ミミとクリステルは死にかけた伝説のロック・スターに会うため旅に出る。
イラストも入っていて120ページくらいの本でしたが、中身はとても濃厚でした。
「赤朽葉家の伝説」を彷彿とさせるような・・・。
始めの美女から生まれた4人の娘と黄色い目玉の息子。その子ども。さらにその子ども。
黄色い目と、何故かぶくぶくと太ってしまう病のストーリーとの絡みがまた絶妙でした。
まがまがしい雰囲気が桜庭さんだなぁと思います。
短いストーリーですが、その中での官能的な部分が印象的です。
そして小さな町での話しですが、ものすごく広い世界を感じる事が出来る気がします。
戦争が関係しているのかな・・・。
どちらにしても凄い作品でした。
私はとても好きです。
〈角川書店 2010.5〉H22.6.6読了
桜庭さんってやっぱり独特の世界を持った
個性的な作家だなーと再確認した作品でした。
装丁を含め、すごく雰囲気のある作品でしたね。
手元に置いて、たまに手に取って眺めたい
そんな雰囲気の作品でした