
殺人症候群 (双葉文庫)
ネタバレ注意!
警視庁内には、捜査課が表立って動けない事件を処理する特殊チームが存在した。
そのリーダーである環敬吾は、部下の原田柾一郎、武藤隆、倉持真栄に、一見無関係と見える複数の殺人事件の繋がりを探すよう命じる。
だが倉持は、その依頼を断った。環の命に1度も背いた事のない倉持が何故?それは倉持の警察官を辞める過去に結びついていた。
一方看護婦の和子は、事故に見せかけて若者の命を次々に奪っていた。若者達にはドナーカードを所持しているという共通点があった。
和子は女で一つで息子を育てている。その息子は心臓を患っており、移植をしなければ完治せず、早くドナーが必要だった。
響子と渉はある会に所属していた。家族を未成年によって殺された人々の恨みを晴らす仕事。犯人である未成年に天誅を与えていた。響子はそれを正義だといい、渉は人殺しだと思っていた。2人もまた、未成年によって大切な人を失い、響子は深い傷を負っていた。
罪はなぜ正当に裁かれないのか。自らの手で悪を裁くのは許されない行為なのか。
症候群3部作。ようやく読み終わりました。
最後は重たかったです。前作にも増して。
この本を読んで、薬丸岳さんの「天使のナイフ」を思い出しました。
今はもうちょっと改正されたと思いますが、少年法はやっぱり疑問を抱かずにはいられません。
死んだ人はもう帰ってこないのに、その遺族は殺した犯人について何も知る事が出来ないなんておかしいです。
その理由は、まだ将来性のある未成年だから未来の事を考えてっていうことみたいだけど、死んでしまった人には将来はないんだよ!って言いたい。
加害者の親も自分達だって被害者なんだって言って開き直ってるし。そういう親ばっかりじゃないけど。
それで、加害者達は更生施設に1年くらいいてすぐに戻ってくる。
大切な家族を失った人にとっては本当にやりきれないものだと思います。
だからこの本を読んで、何が正義で、何が悪なのか、正解は見出せませんでした。考えちゃいました。
考え方としてはやっぱり渉の意見に賛成ですね。
いくら人間の屑で、その人を殺しても、殺した人間は正義のヒーローではなく、同じく人を殺した人殺しだとは思う。
でも、それだけが悪いのかといったら、そうともいえない。正しいのか間違ってるのか、分からないなぁ。堂々巡り。
和子のしたことや響子の考えは、正しいとは言えないけど、2人の死に方は、その報いのようで、それもまた違う気がする。
響子なんて特に、1度身も心も殺されるような想いをしたんですから。
でも、渉が鏑木だったとは。ビックリでした。
倉持についてもビックリでした。
倉持の考えも、倉持の過去を知ったら、正しいのか間違っているのか分からない。
でも、1番の望みは、最愛の妻子を殺した犯人を殺して、自分も死ぬ事だったのかなと思う。
あんな結末になるとは思わなかったな。環のチームの3人は、結局は環の所へ戻ると思っていたから。
あまりにも内容が重たくて長かったから、何だか読み終えて脱力してしまった感じです。
〈双葉文庫 2002.5〉H21.7.3読了
これも良かったですね。
「慟哭」「天使のナイフ」「13階段」なんて作品を連想しました。
重たいテーマでいろいろ考えさせられながら読みました。
このシリーズ内での中でも倉持さんは好きなキャラだったので、ラストはショックでした。