ファミリーポートレイト
ネタバレ注意!
コマコ、5歳。ママのマコと一緒にコーエーを飛び出し、2人で旅に出た。年寄りばかりが暮らし、冬には雪で埋め尽くされる山奥の村、女ばかり一緒に暮らしていた温泉町、豚の解体工場のある町、盲目の大家と月に1度会う穏やかだった町、隠遁者としてママと最後に暮らした大きな家。ずっとママと一緒に過ごした時間。
その旅が終わりを告げ、マコの手下だったコマコは早い余生を過ごし始めていた。
あなたとは、この世の果てまでいっしょよ。
呪いのように。親子、だもの。
ママの名前は、マコ。マコの娘は、コマコ。
すなわち、それがあたし。あなたの人生の脇役にふさわしい命名法。
『赤朽葉家の伝説』『私の男』――集大成となる家族の肖像
長かった…。
ページ数の多さもありますが、コマコの5歳からのいわば人生が描かれているため、何年も読んでいるような感覚に陥りました。
一部はコマコとマコの逃避行が描かれ、二部は旅を終えた後のコマコの生活が描かれてる。
コマコは1部ではずっとマコと一緒。マコが産んだ子だからコマコ。「マコのためのコマコ」とか「手下はボスに絶対服従」って言っているし。
殴られた傷も、煙草を押し付けられた跡もあるし、世間で言う虐待をコマコはずっと受けてたことになる。
マコはコマコを大好きだというけれど、やっぱり自分のことしか考えていなくて、だからコマコは翻弄されて、満足に教育も受けず、存在しない子どもとして育てられて。
桜庭さんはどうしてこういう親子関係や、子どもの心の中の葛藤を描くのが上手いんだろうなぁ。
コマコの心の中、自分の心が抉られる様でしたよ…。ブラックホールに入り込んで彷徨ってるような。1部でコマコが段々現実と想像の世界が一体化していくのが怖くて怖くて。この後コマコちゃんはどうなってしまうのだろうと。
でも、それがコマコの支えだったんだろうな。1番始めに逃げ込んだ山奥の村で、若いお兄さんから文字を教えてもらって。言葉や物語がなかったら、きっとコマコは壊れてしまっていたと思う。
そして第2部。
こちらも長かった…。何せ20年分書かれているわけですから。
コマコは余生のつもりで日々を過ごしていたけれど、周りにいる人達に恵まれていたと思う。鍛冶野さんや由利さんや波やオチケン部員や波の奥さんやお父さんや弟や歳の離れた妹や。いや、弟はどうかな・・・。
父親の大きな屋敷の自分の部屋には馴染めず、高校で暮らす日々。高校を卒業し「犬の心」で働き、嘘しかいわない話を話し続けた日々。小説家になり、ひたすら書き続ける日々。そこから逃げ出し「赤い魚」で働き、真田という真っ当な人と恋人同士になった日々。
再び小説家になって、落ち着いてからはようやく安心して読めました。
真田と普通の恋愛をして結ばれて、本当に良かったなぁと思います。
そして最後のマコとコマコのファミリーポートレイト!
なんと運命的な!
もう素晴らしかったです。重たい沈んだ気持ちが、最後は朗らかに終えられました。
〈講談社 2009.1〉H21.5.23読了
いやーもう圧倒される作品でしたね。
桜庭作品は毎回すごい迫力って感じで
痛々しいんだけど、でも読むの
やめられないって感じですよね。
ラストはほんとビックリでした。
いい方向のビックリだったから良かったです